一周年記念企画 | ナノ
 

TAKE**
 

意識が浮上する。
見慣れた天井が目に入った。
先ほどまで見ていた夢を思い出し、額を流れる冷や汗を拭いた。
…いや、夢などではないことは、とっくに知っている。
紛れもなく、あの悪夢は、現実だ。

開け放してあった窓から、音もなくするりと入ってくる影。
近所の野良で、時々家に入ってきては母親に餌をねだっている黒猫だ。
膝の上に乗ってくるそいつをそっと撫でる。
猫は苦手だ。でも、今は誰でもいいから、傍にいてほしかった。
そうでなければ、自我を保てる自信がなかったから。

フラッシュバックする、先程の映像。
流れる赤。頭が割れそうな悲鳴。…その真ん中に倒れる金髪。
首を振って映像を消さなければ、叫び出しそうだった。
今回で、何度繰り返しただろう。何回、目の前であいつを失った?
「…また、ダメだったのだよ」
応えるように、猫がにゃあと鳴いた。

またダメだった。次もダメかもしれない。
それでも、諦めるわけにはいかない。
あいつを奪われるくらいなら、絶望に塗りつぶされたこの日を、永遠に繰り返す方がマシだ。それが、絶望ではなくなるまで。
「…今度こそ、」
今度こそ、救ってみせる。
そう何度目かわからない決意をして、目を閉じた。

そんな、ある7月7日の話。


Endless Birthday
(本当の終わりを望むのは誰?)



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