一周年記念企画 | ナノ
 

TAKE12
 

それから何回も7月7日が訪れ、そのたびに緑間っちは殺された。
家に押し入った強盗によって。ホームに落ちた女の子を助けようとして。俺のマンションの非常階段から転げ落ちて。
もちろん、何もしなかったわけじゃない。毎回、変えようと努力した。
だけど、変わらなかった。一度だって同じ日はなかったけど、最後は同じだった。
暑くもないのに陽炎が現れて、あざ笑うように緑間っちを奪い去って。
そうしてそれを最後に、視界が目眩のように眩んで、気付けば7月7日の真夜中、あの写真を眺めている。
もう、何回繰り返しただろう。何十年分もの“誕生日”が、彼の死とともに終わり、そうして始まる。
もう、昨日であるはずの7月6日のことすら思い出せない。繰り返したこの日以外で、彼に会ったのはいつだったろう。声を聞いたのはいつだったろう。
7月7日の緑間っちには何十回も会っているのに、7月7日以外の彼に会いたいと思うのはわがままだろうか。

そして、今日も、また始まる。
何度目かもとうに忘れた、7月7日が。
今度こそ、とまた思って。それでもその決意は、回数を追うごとに簡単に瓦解するようになってしまった。
そうして、陽炎を見る。俺の絶望と諦観そのものであるようなそれから、目をそらすのもそろそろ限界だ。
それでも繰り返す時間に、だんだん狭くなっていく可能性を探し、俺は未だもがき続ける。
無駄だとわめく声など、聞こえないようなふりをして。

「…緑間、っち…」
それでやっぱり、今回も。
俺のファンだという女が、突然刃物を持って向かってきて。
俺が何かを考えるより先に、彼の身体が動いていて。
そして、次の瞬間にはもう真っ赤に染まっていた。
眩み始める視界の中で、また彼が微笑んだのがわかった。
黄瀬が無事でよかったって、また。それで緑間っちが死んだら意味がない。俺が生きてても、意味はない。
俺なんか庇わなければよかったんだ。だって、緑間っちがいなくなるくらいなら。

…いなくなるくらいなら?

本当は、気付いてた。
この方法なら止まるって、わかってた。
だけど、やっぱり俺は、緑間っちの隣で生きていきたかった。
緑間っちと一緒に、俺もまた、7月8日を迎えたかったんだ。
でも、それを望む限り。彼の死を避けられないというのなら。
俺の存在なんか、いらない。

「…今度こそ、」
この方法で、彼を救ってみせる。
そう決意して目を閉じると、瞼の裏に彼が浮かんだ。
その笑顔が悲しげに見えたのは、俺の勝手な妄想だろうか。


結末はきっとひとつだけ
(認めたくなかった、最後の方法)



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