小説 | ナノ


(桐生様へ/総受)


「……はぁ…?」
海常高校バスケ部主将、笠松幸男は困っていた。
今日は黄瀬が撮影でいなくて、ギャラリーもいなくて。
珍しく静かに練習ができると思ったら、これだ。
もう一度目の前のメンツを見る。
「だから、俺達と勝負しろ!…ださい」
誠凛高校一年、火神大我。ださいってなんだ。
「ダァホ火神、礼儀考えろ!…でも勝負は本気なんで」
その頭を叩くのは、同じく誠凛の二年、日向順平。
「なんで火神がいるのだよ!気分が悪い」
秀徳高校キセキの世代の緑間真太郎が火神に噛みつく。
右手のテニスのラケットが、よく黄瀬が言ってる緑間っちのラッキーアイテムってやつだろうか。
「真ちゃんがいきなり黄瀬が欲しいのだよ。とか言ったんでしょ」
隣で高尾和成が緑間を宥めている。
…異色のメンバーすぎる四人である。
「ここにもう一人います。お久しぶりです」
「ひょわっ!?」
……失礼、五人だった。

「黄瀬ならいないぞ」
「知ってますよ」
「だから来たのだよ」
「じゃあ、何しに…」
「黄瀬を秀徳にもらおうと思って」
「いや、誠凛に決まってます」
「……黒子。邪魔をするんじゃないのだよ」
「緑間君こそ」
よかったな黄瀬、モテモテで。
この前帝光のみんな冷たいとか言ってただろ。
つーかキセキの世代ってこんなんばっかか。この前黄瀬も黒子っちくださいとか言ったらしいって聞いたぞ。
「…つーか何に使うんだ黄瀬なんか」
「テツヤ3号にするに決まってんだろ」
決まってるのか。そしてテツヤ3号ってなんだ2号いるのか。
「2号は犬です」
黒子は心を読むな。そしてうちのエースを犬扱いするな。
「ふん、バカめ。黄瀬は秀徳でラッキーアイテムになるに決まっているのだよ」
だから人の所のエースつかまえて、そのテニスラケットと同列に置くな。
「というわけで笠松さん」
「勝負、しませんか?」
「海常高校対俺達で」
「黄瀬涼太を賭けて」
「ま、勝つのは俺達だけどな」
「火神はそろそろ敬語を覚えるのだよ」
息ぴったりすぎだろ。
「いいぜかかってこい!黄瀬は渡さない!黄瀬がいないと困るんだよ」
森山乗るな。お前が困るのは女の子的な意味でだろうが。
「俺(れ)(ら)の方が黄瀬(ラ)ブなんだか(ら)な!」
早川はラ行を言え。なんだ黄瀬部って部活か。

「いいな、俺も混ぜろよ」
頭の上に突然、重みがかかった。
成長が止まったらどうするんだ。誰だコレ…
「よーテツ」
「…青峰君」
……なんだ青峰か。
っていや、なんだじゃねぇよ。何俺まで順応しそうになってんだ。
「こっちは黄瀬抜きのレギュラー四人と俺、そっちはお前達な」
…何しに来たんだこの黒いのは。
まぁ、こいつはこちらの味方みたいだからまだ…
「ちなみにもし勝ったらどうするんですか、青峰君」
「もしって何だよ。俺が勝つのは決まってることだろ。…まぁ勝ったら、毎日コスプレで俺を癒やす係だ」
……全く良くなかった。
むしろ一番ひどい。
「何だよコスプレって。セーラー服とか、メイドとかか?」
「ハッ、わかってねぇな火神。コスプレといえば裸エプロンに決まってるだろ!」
…漫画が違うだろ。なんだ裸エプロンって。
裸エプロンって、白いフリフリエプロンで…
『笠松先輩、あーんっ』
……って俺は何を想像してるっ!?

一人悶々と考えている俺そっちのけで、試合について決めたり、黄瀬を巡って言い争ったりしてる他のメンバー達。
「…でもなー、いっつも笠松ばっかり黄瀬を独占してんだよなー」
「は?」
突然、森山の口から俺の名前が出る。
それと同時に、冷たい視線が人数分、俺に突き刺さった。
「一番蹴られたり殴られたりしてるのに、いっつも笠松先輩笠松先輩って」
…その後に行われたゲームで、俺はなぜか9対1のような気分を味わう羽目になった。

…とりあえず。
痛む胃をさすりながら、笠松幸男は思考する。

とりあえず、明日は黄瀬をしばくところから始めよう。


独占禁止法!
(……別に嬉しくなんかないからな)

20120717

桐生様へ捧げちゃいます。
サブタイトルは頑張れキャプテン。
笠松さんのツッコミが光ります。
ちょっと笠黄っぽいけどできてません。慕ってるだけ。
本当は伊月さん出したかったけどダジャレが思いつきませんでした。
木吉さんとか赤司様とかも出したかったけど収拾つかなくなるからやめた。すでについてないですがね。
ポジション被ってる?なんのことかな?

ちなみに裸エプロン先輩(めだ●ボックス)好きです。同志様いたらお友達!



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