小説 | ナノ


7/5 Happy Birthday Rano!

(No.6/ネズミ×紫苑)


……夢を見た。
ぼくは『クロノス』に住んで、生態学の特別コースに通う。
きっとこのNo.6の中でもっとも恵まれた、ピラミッドなら一番上の層。
好きなことを勉強して、何不自由なく暮らし、友達と笑う。
何気ない日常の中で、そのうち彼女なんかできたりして。
女の子なんて沙布くらいしか知らないけれど、それがいいものだということくらいわかるから。

それはとてもしあわせで、あたたかな夢。
ロストタウンも、ましてや西ブロックなんか無縁な。
きっとずっといつまでも、No.6に守られて続く、安心。

…だけど。
夢の中で、ぼくは不意に考える。

……ここにはネズミが、いない。

灰色の瞳も、やさしい腕も、安心する声も。
どこにもない世界だ。
そう思ったら、しあわせな世界は一変して。
灰色に変わる、夢。
…ネズミの瞳より、ずっと冷たい、灰色に。

息が、できなくなった。


「…紫苑?」
目を覚ますと、心配そうな灰色の瞳に覗き込まれた。
「…うなされてた。…大丈夫か?」
「……こわいゆめ、みた」
ううん、あれは夢じゃない。
ありえたかもしれない、未来だ。
あの日。12歳の誕生日に、窓を開けなければ。
倒れそうな小さなVCの手当をし、逃亡の手助けをしなければ。
たぶんぼくは、あの夢のような生活を送ってた。
No.6の正体に気付かないまま、外の世界もしらないままで、一生。

それはきっと、誰もが羨む幸せで。
ぼくだって、そう思ってた。…だけど。

「ネズミ」
「何だよ」
「…すき」
「……ばか」

灰色の瞳も、やさしい腕も、安心する声も。
「あんた、…ほんとばか」
重なった唇の温度も、囁かれる甘い皮肉も。
「…きみだって、似たようなものだろう?」
ネズミと出会って、ばかみたいに恋して、知ったから。

この場所を、手放すことに比べたら。
幸せな夢に未練など、もうない。


きみがいない世界のを見た
(それはひどく幸せな悪夢)

20120705

今日は『ゼピュロスの幻想』の管理人であり、数少ないリア友でもある蘭乃ちゃんの誕生日です。
おめでとう!ということで、蘭乃ちゃんおすすめのNo.6のネズ紫です!
これを書くために原作とアニメをチェックしたのですが…公式ェ…。
まだ二巻途中ですがこのままだと誕生日に間に合わないので書いてしまったよ。
私もハマったなんてそんな受験生的に言えない。
蘭乃ちゃんおめでとう!
7月4日の幼なじみさんもおめでとう!めりかと同じ誕生日羨ましいなんて思ってないんだからね!



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