小説 | ナノ


(碧依様へ/キセ黄)


「明日の練習は中止になった」
えぇぇぇ!と、大声が体育館にこだまする。
「うるさいのだよ、黄瀬」
緑間っちは、俺から一歩距離を取る。
「なんでっスか赤司っち!」
頓着せずにキャプテンを見つめてみれば、普段あまり見られない笑顔が怖い。
「涼太、少し黙ろうか」
「はいっス!」
反射的に頭を下げるも、疑問はやはり残る。
「体育館の照明がおかしいらしくて、明日は全ての体育館を検査するそうだ。立ち入り禁止」
「そんなぁー…」
最近の土曜日は仕事が多くて、あまり練習に出られなくて。
明日は久しぶりに、土曜日一日オフをもらったのに。
よりにもよって明日…どんだけツいてないんスか俺…。
「明後日は使えるそうだから、いつもの時間に練習スタート。休みだからと気を抜かないようにな」
「えぇー赤ちんなんで俺の方向いて言うのー」
「ひとり食い倒れツアーとかして腹壊さないようにな、敦」
「しないよそんなアホなこと。赤ちん俺を何だと思ってるの」
うなだれる俺なんか完全に無視で、赤司っちと紫原っちは楽しそうにしゃべっている。
次の練習は明後日…といっても、明日の分の仕事が入っていて、明後日は一日中仕事の予定だ。
次にバスケができるのは、月曜日ということになる。
…もちろん、それだけじゃなくて。

「…久しぶりに、ずっと一緒にいられると思ったのに」
「は?何が」
ロッカールームに残っているのは、気付けば俺と青峰っち、それから赤司っちだけになっていた。
「明日っスよ!…一日練習、楽しみだったのに」
みんなの才能が開花するにつれて、一緒にいることもだんだん減っていって。
今ではもう、お昼休みも登下校もオフの日も別々で

…入部した頃は、いつも一緒だったのに。
……それを寂しいと思うのは、きっと俺だけ、なんだろうけど。

「黄瀬」
涙をこらえて俯いていたら、名前を呼ばれる。
「あ、青峰っち、」
「別に、お前だけじゃねぇぞ」
顔を上げたら、青峰っちは笑っていた。
一番最初に、笑わなくなった、青峰っちが。
「…お前がいないと、みんな寂しいんだ」
「…そうなん、スか?」
「あぁ。…そうだよな赤司?」
「珍しく大輝が正論だね」
「なっ!俺がバカだって言いたいのかよ!」
「僕はそこまで言ってないよ」
「…ぷっ。あははっ」
思わず吹き出したら、青峰っちと赤司っちも笑う。
…以前の二人に、戻ったような気がした。

「…というか、涼太」
「はいっス?」
「部活は休みと言ったが、お前に休みとは言ってないぞ?」
「……え?」
「さすがにバスケができる場所は確保できなかったけど」
別にバスケしなくたって、一緒にはいられるだろう?

不覚にも泣きそうになってしまった。
「集合場所は駅前、時間は…」
赤司っちの声を聞き逃さないようにしながら、やっぱりこの人達が好きだと思った。

もちろん、外で待っているのであろう、他のみんなのことも。


明日、いつもの時間に
(大好きな、みんなと)

20120704

碧依様へ捧げます!
キセ黄大好きなのに難しい…!
ていうかこれ…総愛されっていうか黄瀬がみんなを愛してしまっている…。
このようなもので申し訳ないです…よろしければお受け取りください。



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