小説 | ナノ


Happy Birthday!
Motoki Haruna * 5/24

(榛準)


部活が終わって、普段より急いで帰宅すると、家には誰もいなかった。
好都合だ。弟なんかいたらからかわれるのが恥ずかしくて、きっとできないだろうから。
普段、立ち入ることはめったにないキッチンに入り、昨日のうちに量っておいた材料を取り出す。
溶き卵に溶かしたバター、サラダ油と砂糖を加えて混ぜて、混ざったらそこにホットケーキミックスを入れる。
あとはこれをカップに入れ、温めたオーブンで焼けば完成だ。
榛名のお姉さんに教えてもらったそれは、料理の知識なんかほとんど皆無に等しい俺でも、特に迷うことなく手順を進めることができた。

5月24日。
榛名と付き合い始めて、初めてのあいつの誕生日。
誰かと付き合うの自体が初めてで、しかも相手は同性。
それを隠している身で、まさか和さんや利央に泣きつくわけにもいかなくて、最終的に頼ったのは榛名のお姉さんだった。
『高瀬くんがあげるものなら、元希は何でも喜ぶと思うけど…そうね、それじゃあこれなんてどうかな?』
そうして渡されたのが、このレシピだった。
…確かに榛名はよく食うし、意外と甘いもの好きだし。
……それに。逆の立場なら、どんなものでも嬉しいと思うし。
例えば言葉とか。…あの、眩しい笑顔を向けられるだけでも。
それを、あいつにも求めるのは自惚れだろうか。
「…喜んでくれたら、いいな…」
一年に一回の誕生日。俺と過ごしてくれて、俺のあげたもので喜んでくれたら。
そしたら、…俺も、幸せだ。
いや、むしろ俺は、あいつといるだけで幸せだから。
だからその幸せのうち、少しでもあいつに分けてあげられたらいいなと思う。

オーブンから、いい匂いが漂ってくる。
このあと見れたらいいなと思うあいつの笑顔を思い浮かべながら、とりあえず荷物を置きにキッチンを出た。


せのカップケーキ
(届きますように、と)

20130524

またギリギリである…orz
なんとなく準太は料理できなそう。だいたい某眉毛のせい。
ていうか野球部は料理とかしなそう。
でもあえて料理男子を押すのは、単に私の好みです。
このレシピならできる…はず!カップケーキのレシピはあのクックなパッド様より。
そしてきっと榛名姉さんは料理上手い気がする。
とりあえずおめでとう榛名さん!



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