小説 | ナノ


(青桃)


「青峰くーん。私ジュース飲みたーい」
「またかよさつき。たまには自分で」
「青峰君」
「……はいはい」

「うわー桃っち、相変わらず鬼畜っスね…」
「誰が鬼畜よ誰が」
青峰君が出て行った部室で、きーちゃんが呆れたように言う。
「桃っちって青峰っちにだけわがままっスね」
「別にわがままなんて言ってないわよ」

そう、私はわがままなんて言ってない。
青峰君の中で、ずっと私は一番のお姫様。
ずっと一緒にいて、ずっと私を見てたんだから。

そう、君の世界は私のもの。

「ったく。…ほれさつき、これでいいんだろ?」
「ありがとー」
「青峰っち、俺の分はないんスか?」
「ねぇよ死ね。ほら、1on1すんだろ」
もっと可愛いって思って。
髪型も靴も言葉まで、ちゃんと気付いて。

「…もうくっついちゃえばいいのに」
「えっテツ君いつから!?冗談言わないでよ!」
私は別に、青峰君のことなんて。


「…さつき?どうした?」
「えっ!?…ううん、何でもないよ!」
テツ君が変なこと言うから、気になってしょうがない。
部活が終わって、方向が同じ私と青峰君はいつものように一緒に帰る。
普段と同じ距離なのに、隣にいることに妙にドキドキする。
高い位置にある横顔を、こっそり見上げる。
見慣れた浅黒い肌。整った顔立ち。
…ありえない。
青峰君が王子様なんて。
白馬に乗ってたりしたら、笑えるし。

「あっ、おい!さつき!」
「へっ?」

ぎゅ、と。
お腹に腕が回され、引き寄せられる。
後ろから抱き締められてると気付くまで、少しかかった。
「あっ…青峰君…っ!?」
「……危ねぇなぁ。大丈夫か?」
目の前を、車が一台、通り過ぎる。

…ダメだ。
青峰君の方がずっと、危ない。
「…ありがと」
「気ぃつけろよ?」
……恋に、落ちた。

………ううん、そうじゃないや。
「あおみねく、…大ちゃん」
「ん?」
「……手、繋いでいい?」
もうずっと、たぶんずっと昔から。

青峰大輝は、世界で私だけの王子様。


World Is Mine!
(私の世界も、とっくに君のもの)

20120612

青桃では青峰っちは黄瀬の扱いが酷いのがデフォ。
桃っち女王様。



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