小説 | ナノ


5/24 Happy Birthday
Motoki Haruna!


(榛準)


「榛名さん!誕生日おめでとうございます!」
「おー。さんきゅー」
5月24日、俺の誕生日。
通り過ぎる後輩達が挨拶と一緒に祝いの言葉を口にしていく。
0時ぴったりにメールをくれたヤツらもいるし、さっき秋丸がジュース奢ってくれた。
この年になって誕生日もないかと思ったが、やっぱり少しだけ嬉しい。

…のだが、俺にはひとつだけ不満があった。
恋人が、祝ってくれないのだ。

俺の恋人、名を高瀬準太という。
名前の通り、立派な男である。
桐青高校の野球部で、エースで。
…可愛い恋人、なのですが。
最近、めちゃくちゃアピールしてたのに。
5月24日は俺の誕生日なんだって。
朝からメールを待ってみてはいるものの、あいつ専用のフォルダに受信はなし。
まあもともと自分から送ってくるやつじゃないけど。
鬱々とした気分で授業を聞き流す。
机の下で携帯を開いたり閉じたりしていたら、あっという間に放課後だ。
来週の頭からテストなので、部活は休みだ。
鬱々とした気分を引きずったまま、校門に向かう。
「…よぉ」
校門の前に、
…俺の恋人が、立っていた。

「…準太?」
「ん」
「…お前、なんで」
「テスト期間で、部活ない、から…」
…そうだった。こいつんとこは昨日から明日までテストだ。
「でもお前、いつもテスト前ってナカザワにつきっきりだろ?」
「だって、お前、」
誕生日、じゃん。

「……忘れられてるのかと思ったじゃねーか」
「うん、…悪い。昨日、学校に携帯忘れて、朝見たら充電切れてて…」
しゅん…と落ち込んだように俯く準太はものすごく可愛くて、ここが外じゃなければソッコー押し倒してるだろう。
「…まぁ、とりあえず、うち行く?」
「ん。…でも、その前に」
「ん?」
「…ハッピーバースデー、元希」

あいしてる、とその後に紡がれた声は小さくて、唇の動きでしかその意味を理解できなかったけれど。

この愛しい生き物を抱き締める意味としては、俺には充分だった。


特別な
(お前のそばにいられて)
(世界一幸せだと、そう思う)


20120524


ギリギリセーフ!(現在23:31)
榛名さんおめっと!
この後『人前で盛ってんじゃねー!』と準太に蹴られます。



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