小説 | ナノ


(島準)


変わったのは、いつからだっけ。
もう思い出せない。
ずっと昔だった気もするし、最近のようにも感じる。
忘れてしまうほどの時を、一緒に過ごしてきたから。
ただひとつだけ、はっきりしてるのは。
…あの頃の慎吾さんは、もうどこにもいない。

「慎吾さん」
「ん?どした?」
「…遅かった、ですね」
「あー、ちょっと残業でさ」
「…そ、スか」
部屋に入ろうとする慎吾さんの袖をつかんだのは、ほとんど無意識だった。
「……ん?」
振り向いた首元についた痕と、ふわりと香る女物の香水。
何も言えない俺は、一体この人の何なんだろう。
「…おーい?」
「あ、いや…何でもない、です…」
…いつからだろう。
この人は俺の名前を呼ばなくなって、いつも女の人の痕跡を残して夜遅く帰ってくる。
心の中の叫びは届かないし、震える声で名前を呼んで、なんて呟くこともできない。
いちばん、近くにいたはずなのに。
今の俺と慎吾さんの間には埋められない溝があって、その境界線に届かない。
こらえた涙が溢れないよう、下を向くことしかできない。
…この人と未来を生きたいのに、もう走ることもできない。
……限界、なのかもしれない。

でも、離れられないんだ、結局は。
『準太、ずっと一緒にいような』
ただ楽しかったあの頃を、忘れることなどできないのだから。


ブラック★ロックシューター
(今日も、闇を駆ける星に願う)
(ただ、あなたの隣にいたいと)


20120521


準太のことは変わらず愛してる。でも、呼吸をするように浮気をする。
そんないやらしんご慎吾さんが好きです。



[back]