小説 | ナノ


(緑黄緑)

「緑間っちー」
「なんだ、黄瀬」
なんだじゃないっスよー。
「なんか今日、近くないっスかー?」
「だからお前は黒子に嫌われるのだよ」
「き、嫌われてはないっス!……まだ…」
ひどい、緑間っちがひどい。
俺と緑間っちは男同士だけど、所謂恋人という関係にある。
それなのに、緑間っちは基本俺に冷たい。
毒舌なのは元からだけど、もう少し優しくしてくれたっていいんじゃないかな。
まぁ、そんなところも好きな俺は、相当緑間っちに惚れ込んでいる。

「本当にどうしたんスか緑間っち…?」
そんな緑間っち、今日はなんかおかしい。
登下校中、大抵は緑間っちが俺の2メートルくらい前を歩く。
それ以上近づくと蹴られる。
…それなのに、今日はなんと隣に並んで歩いている。
しかも、その距離なんと15センチ。
手が…手が触れそう。
「どうしたんスかまじでー。緑間っちー?」
「う、うるさいのだよ!」
チョップ食らった。
地味に痛い。
…やっぱり、ひどい。
「ら、…ラッキーアイテムが、」
涙目になっていると、緑間っちが小声で呟く。
「ん?なんすか緑間っち」
「だから!おは朝で今日の俺のラッキーアイテムが黄色いものなのだよ!」
叫ぶように言って、緑間っちはそっぽを向いた。
「…おは朝」
そうか、そのせいか。繋がった。
自然ににやけていく口元を押さえ、沸き上がる嬉しさに目を細める。
…緑間っちは知らない。
俺が、おは朝の占いを見始めたこと。
緑間っちと情報を共有したくて、だったんだけど、こんなふうに役に立つなんて。
……にしても、本当に。
「素直じゃないっスねー…」
「ん?なんなのだよ」
「なんでもないっスよー」
…だけど、まだ教えてあげない。
答える代わりに、いつもどおり爪が整えられた左手をぎゅっと握った。


素直じゃない君
(今日のかに座のラッキーアイテムは)
(あなたのいちばん好きなもの)


20110831


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