小説 | ナノ


(赤黄)

※死ネタ注意!


生まれ変わったら、さ。
ね、赤司っち。
俺は赤司っちみたいになりたいんスよ。
いつも冷静で、周りが見えてて。
そのくせ負けず嫌いで、何でも一番で。

「そう見えるか?」
俺の言葉に、赤司っちは眉を寄せてそう言った。
「違うっスか?」
「少なくとも、涼太の前では僕、余裕なんてないし」
そう言うと、赤司っちは俺をぎゅっと抱きしめてくれた。
安心する温度、匂い。
…こうやっていつも、赤司っちは俺に優しさをくれる。
だけど俺は、それを返せない。
今だって震える赤司っちを抱きしめ返したいのに、腕に繋がれた機械が邪魔をする。

「赤司っち」
「…なに」
「顔、上げて欲しいっス」
「やだ」
「お願い」
「……っ」
少し甘えた声を出すと、赤司っちはしぶしぶというように顔を上げてくれた。
頬に、透明な雫が伝う。
その頬にそっと口づける。
きっとこれが最後のキスだから、ゆっくりと。
「…こっちだろ、馬鹿」
涙声で赤司っちが言って、唇が重なった。

「…俺のこと、忘れないで」
「……忘れられるわけ、ねぇだろ」
生まれ変わったら、今度こそ。
赤司っちみたいな人になりたい。
…あ、でもやっぱり、また俺でもいいかも。
だってそうしたら、またこの場所にいられるようになるよね。
赤司っちの、隣に。

「     」

薄れゆく意識の中で、赤司っちの声だけが、はっきり聞こえた。


またね
(俺もっスよ、と呟いた声が届くことはないけれど)
(きっと、伝わってるはず)



20120511

初っ端から暗いし黄赤みたいだし暗いし赤司っち偽者だし暗くてすみません…!



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