小説 | ナノ


(煉華様へ/緑黄)


いつものようにストレッチをして、眼鏡を外して、ベッドに入る。
目を閉じればすぐに、睡魔に襲われるのが常。
…の、はずなのに。
(…眠れない…)

練習だっていつも通りこなして、身体は疲れている。
寝なければ、明日に支障をきたすこともわかっているのに。
…やっぱり、あれか。
忘れていた、わけではない。
考えたくなかっただけだ。

…今日の放課後、黄瀬に告白された。

『緑間っちが好きっス。中学の時からずっと好きでした』
いつも通りの練習の後、高尾と別れて家に向かう途中。
いつも通り抜ける近道の公園に、黄瀬がひとり立っていて。
珍しく真剣そうな表情だったので、声をかけた。
そうしたら、突然言われたのだ。

何も言えなかった。
中学の時に、一緒にバスケをした仲間で。
モデルなんかやってて、綺麗な顔をしてはいるけど、背も高くて筋肉もついたれっきとした男で。

『いいっスよ』
黙り込む俺に、黄瀬は勘違いしたらしい。
悲しそうな笑顔で、緑間っち、と俺を呼んだ。
『…気持ち悪い、っスよね…ごめん』
それは違う、と言う暇も与えず、黄瀬はくるりと背を向けて走り去ってしまった。
追いかけることなど到底できなくて、俺はかなり長い間、そこに立ち尽くしていた。

(………ん?)
そこまで回想したところで、小さな違和感を感じた。
俺は普通に女が好きだし、同性をそういう対象として見るのはどうかと思う。
…なのに、俺は黄瀬からそう言われて。
気持ち悪いとは思わなかった。
……どころか。

(なんで俺は、ちょっと嬉しいなんて、)
胸に広がるこの温かさは、嬉しい、としか形容できないもので。
(そんな、まさか、俺は…)

黄瀬涼太のことを、好きだ。と。
胸の真ん中が、そう告げていた。

「…不覚なのだよ」
やはり今夜は眠れそうにない。
原因に気付いたところで、それは変わらないらしい。

…こうなったら、仕方ない。
俺は目を閉じて、明日の朝一番にする黄瀬への電話の内容を考え始めた。


リスタート
(ここから、始まる)


20120512

めちゃくちゃお待たせしてしまって申し訳ありません…!!
緑間さんの自覚。
煉華様に捧げます。



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