小説 | ナノ


(青黄)


「青峰っちー、紅白見たいっスよー…」
「そんなに見たいなら部屋のテレビで見ればいいだろ」
12月31日。
大晦日、と呼ばれる一年の最後の一日。
今日この日のために俺は3ヶ月ほど休みなしで働いて働いて、なんとかオフを手に入れた。
それなのに、青峰っちが冷たい。
リビングのテレビでは、この日お馴染みの紅白歌合戦ではなく、なぜかマイちゃんのDVD。
「DVDならいつでも見れるじゃないっスかー…」
「いつでも見れるんだから今見てもいいだろ」
「そうっスけど…」
…鈍感だ鈍感だと思ってたけど、やっぱり青峰っちは鈍感だ。
…年越しを一緒に迎えたい、なんて、我ながら乙女みたいな思考だと思うけど。
だけど、青峰っちと恋人になって、高校を卒業して、一緒に暮らしはじめて。
流れていく時間の中を、少しでも青峰っちと歩きたいから。
色んな幸せを、青峰っちの隣で感じたいから。

「ふぁー…」
最近仕事を詰めていたせいか寝不足。
まだ年が変わるまで一時間くらいあるのに、油断したら瞼が閉じてしまいそう。
「黄瀬」
「んー?」
「眠いならベッドで寝ろ」
「…眠くないっス」
「目ぇ閉じてんぞ」
「んー…青峰っちのばかー…」
わかってない。
…一緒にいたいんだってこと。
もー知らない、ふて寝しちゃえ。

「――…ホントに寝たのかよ」
俺の肩にもたれかかって、黄瀬はすっかり眠ってしまったらしい。
黙っていれば整った顔立ち。
多少うるさくてうざくても、こいつは俺の恋人で。
俺に言われたくないかもしれないがアホで、単純で。
「…青峰っち、ばかー…すきだー…」
…そんなところも、全部。

リモコンをいじってDVDを止め、テレビへと切り替える。
40インチのテレビは、ちょうど黄瀬が出ている年越し番組を映す。
「今年もあと1分ですー」
録画のくせにカウントダウンを開始する黄瀬達。

「3、2、1、
HAPPY NEW YEAR!!」

画面の中でクラッカーを鳴らす黄瀬と同時に、

眠り続ける黄瀬に唇を重ねる。


…本当は、黄瀬のことなんかお見通しだ。
俺と年明けを一緒に迎えたかったのだって、
そのために無理してたことだって。
それでも、黄瀬にわざとそっけなくしたのは、
黄瀬にもわかってほしかったから。


「…別に、特別なことなんかいらねぇだろ、年越しなんか。
そんなことしなくたって、お前は俺のだし。

…ずっと、一緒なんだからな」


来年も、再来年も。
何度年が明けてもずっと、ずっと。


終わらないになれ
(永遠のその先まで)


20120101

title by 確かに恋だった



[back]