小説 | ナノ


(緑→←黄)


…黄瀬は、綺麗だ。
モデルなんかやってしまえるほどの、整った容姿はもちろんのこと。
「青峰っちー、1on1やろうっス!」
バスケに向かう真剣な姿勢。
ひたむきなその姿。
「へへ、今日こそ負けないっスよ〜」
そして、見るもの全てを幸せにさせるような、無邪気な笑顔。
いつからだっただろう。気づいたら、黄瀬ばっかり見ていた。
…これが恋だと気付いたのは、つい最近だったけれど。

…緑間っちは、綺麗だと思う。
整った綺麗な容姿。
少し天然なところも、頭がいいところももちろんだけど。
一番は、あのシュート。
綺麗なフォームから放たれる、正確無比の軌道。
俺が模倣できなかった、緑間っちの才能。
…あの綺麗なひとを、いつの間にか俺だけのものにしたくなっていた。

…わかっている。
黄瀬は男で、俺も男。
俺達は交わらない平行線だ。
黄瀬はこっちに来るべきじゃない。
…俺が引きずりこんだらいけないことくらい。

世間とか、道徳とか。
普段俺達を守るものが、牙を剥くかもしれないから。
だから、崩さない。
崩すことなどできない。
…誰よりも大切だからこそ、緑間っちとの境界線を壊したら、もう戻れない。
だから俺は、境界線の傍で、今日も無邪気なふりで笑う。

…怖い。
この気持ちがバレて、黄瀬に嫌われることが何より。

緑間っちに嫌われるくらいなら、
俺の気持ちに一生気付かないで。


直前で逸らす
(交錯することはない視線)


20111201

title by 空のカケラ



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