小説 | ナノ


(緑黄)


携帯を開けば、同じ数字が並ぶ今。
2011.11.11 AM01:11。
…夜中である。
普通の人間は寝ている時間だ。
朝練のあるバスケ部員、しかも帝光中ならなおのこと。

『緑間っちー!』
…もう一度言う。夜中である。
受話器の向こうのそいつのテンションが、昼間のそれと大差ないのは何故だろう。
「…黄瀬」
『なんスかー?』
「寝たいのだよ」
『俺は寝たくないっスー』
…手の中の携帯を握りつぶさないように気をつけなくてはならないな。
ここまで噛み合わない俺達が、恋人だと言えるのだろうか。
しかも男同士である。

「何か用なのか?」
気を取り直して、本題に入ってもらおうと尋ねる。
『緑間っち、知ってるっスか?』
「なにを」
『今日、ポッキーの日なんスよ!』
…携帯がミシリと音を立てた気がする。落ち着け、俺。
「だからなんなのだよ」
『……だから、会いたくて、』

会いに来ちゃった。
珍しく敬語が消えた言葉と共に、ちいさく鳴る窓ガラス。

ここが二階だとか。
ポッキー関係ないとか。
朝になれば会うだろとか。
言いたいことはいくらでも出てくる。
出てくる、のに。
黄瀬の顔を見ていたらどうでもよくなって、窓を開けた。

「黄瀬」
人事を尽くして、天命を待つ。
そんな俺とは正反対のこの男。

それでも受け入れてしまうのは、たぶん俺が黄瀬を好きだから。


1111
(お前がいちばん)

20111111

ポッキー関係ないよ!



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