小説 | ナノ


(島準島)
 ※ぬるいながら性表現あり

俺の言葉に、慎吾さんはわかりやすく目を見開く。
間抜けな表情だ。
普段なら笑いが止まらなくなるところだが、今はそうはならない。

「好きなんです。だから、俺のものになってください」

畳み掛けるように繰り返す。
「…お、まえ…冗談言ってる場合じゃ、」
「冗談に見えますか」
「……。あのな、じゅん…っ」
唇を塞ぐ。言葉なんかいらない。
欲しいのはただ、目の前のひとだけ。


「…あんたがいけないんですよ」
行為が終わって、慎吾さんは意識を落としてしまって動かない。
いつも飄々とした慎吾さんからは、想像もできないほど淫らだった。
さっきまでの行為を思い出して、熱くなる自身を押さえながら、もう一度囁く。
「あんたのせいです、慎吾さん」

あんたが、俺の気持ちに気付いていながら、何も変わらず接してくるから。
あんたが、引退した途端に彼女なんか作るから。
彼女がいるくせに、俺に笑いかけるから。
俺を心配して、会いになんか来るから。
とっくに気付いているくせに、冗談にしようとするから。

薄く開いた唇に、キスを一つ落とす。
…壊れたゲームが始まる音がした。

戻らないなら
(壊してしまえばいい)

20111103



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