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Happy Helloween!

(榛準)

「準太ぁ、とりっくあんどとりーと」
いつものように突発的にやって来た榛名が、校門の前で言った。
今さら誰も驚かないチームメイト達が、軽く頭を下げて榛名の脇を通り過ぎていく。
…誰もツッコまないので、仕方なく口を開く。
「trick or treatだろ。andってなんだandって」
「そこなの準さん!?もっとツッコむとこあんじゃん!なんで榛名いんのさ!!」
みんな帰っていくのに一人だけ動かない利央が、俺の隣でふわふわ頭を揺らして叫ぶ。
「うるせーよ仲沢。おめーこそなんでいんだよ」
「俺達は今帰りなの!榛名部活は!?」
「サッカー部大会前だし、俺ら秋大終わったし、グラウンドもトレーニングルームも譲って急遽オフ」
サッカー部強ぇから逆らえねんだよな、と榛名は唇を尖らす。
「でもまぁ準太に会えたからいーや。つーことで、とりっくあんどとりーと!」
次の瞬間にはもう笑った顔に戻る。
「はいはい、バカップルバカップル。じゃーね準さん、俺帰るから」
利央は呆れたように帰ってしまった。
「…で、何だよ。andって」
「とりあえず菓子もらう。それから悪戯する」
「…俺様め…。…ちなみに菓子ねーっつったら」
「犯す。菓子のかわりにお前食う」
「俺は菓子と同等かよ!?」
並んで俺んちへと向かいながら、ぽんぽんと軽口を飛ばし合う。
右を向くと、少し高い位置に笑顔が見える。
太陽みたいなその笑顔の暖かさも。
優しく力強く俺の右手を包む、多くの人が焦がれるその手も。
全部、榛名と出会って知ったこと。

本当は、来てくれたらいいなと思ってた。
部活なくなった。ってメールが来て、期待もした。
校門で榛名を見つけて、嬉しかった。
…言ってなんかやんないけど。

家についたら、どうしようか。
両親と弟は仲良く映画だから、帰りはおそらく深夜近く。
それまで、2人きりだ。

空いている左手をポケットに突っ込む。
榛名の好きなチョコ、来てくれるんじゃないかと思って買った。
…でも、これはあとにして、大人しく榛名に食われてやろうか。
悪戯とか言って、こっちから何か仕掛けてやるのも面白い。
こっちはいつも榛名に驚かされてるんだ、たまにはいいだろう。

「…準太?なににやけてんだ」
「いや、別にー?」
…手始めに、今ここで榛名に抱きついてみようか。


trick and treat!
(sweet and sweet!)

20111031



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