小説 | ナノ


(青→黄)

たとえば、これが全て夢だったなら。
お前と出会ったことも
お前と話したことも
お前に恋をしたことも。
隣を歩いた道も
キスしたときの唇の甘さも
一緒に見上げた星空も。
俺は甘い想いを知らないまま過ごす。
見知らぬ誰かに恋をして、平凡に家庭を築いて。
お前も遠くで、誰かと。
俺とお前は交わらない。

お前がいなくても、俺はバスケが好きなまま。
俺がいなければ、お前は遠いモデルのままで。
お前と出会う前の俺。
バスケが好きで、楽しくて、そんなあの頃の俺のまま。
…それだって充分、幸せだったはずだ。

もしもこれが全て夢だったら、
目が覚めたら、お前を忘れていたら。
お前と知った幸せな気持ちは全部消えるけど。
それでも、いいと思った。

『青峰っち、さよならっス』
この悲しみさえ、消えてくれるなら。

もしもであったなら。
(出会わなければ良かったのに)

20110902


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