小説 | ナノ


(さあや様より/青黄)

「大ちゃん見て見て!きーちゃんが載っ てるよ!」

さつきがそう言ってオレに見せてきたの は、所謂ファッション誌だった。 どうやら特集をやってるらしい。 と、言っても、黄瀬の特集がこう言った 雑誌でやってるのは何回か見たことがあ るため珍しくも無い。 だからオレは手渡された雑誌を、なんと なしにパラパラと捲る。

「…‥んだこりゃ」

珍しくも何とも無い、そんなスタンスで 臨んだオレは思わず言葉を漏らした。 数ページに渡るその特集は、良くある トーク。それと連休にやったサイン会に ついてだった。

〈ゴールデンウィークに一万人が大集 結!!〉

どどんとした見出しと共に、その場の写 真が所狭しと貼ってある。 予想以上のスケールに、一瞬だけ思考が 止まった。

「一万人って‥なんだよ」

写真に写っている黄瀬と、他の数人で集 まったらしい一万人。 残念ながら一万人に想像が付かないオレ は、ただ人が込み入ったその写真を見て ぐったりする事しか出来ない。

訳は分からないなりに凄いとは思う。 が、それ以上に黄瀬が不特定多数の奴ら とサインだけで無く握手しまくってる 姿、男性であればハグをするサービス心 は気持ちの良いもんじゃない。

「…‥ワケわかんね」

苛々する自分が嫌で、オレはそのページ からはさっさと退散して次のトークペー ジへと移った。

☆今回の握手&サイン会、いかがでした か? ★そうっスね。ファンの皆さんから直接 パワーを貰ったって感じでとっても楽し かったっス! ☆一万人も集まったそうですね。大変で はありませんでしたか? ★確かに。でもそれは来てくれたファン の人も一緒っスからね苦では無かったっ スよ!

まるで一端の業界人みたいな内容を話す 誌上の黄瀬を、オレは鼻で笑ってやる。

「ったく、どの口が言うんだよ。あの泣 き虫が」

★やっぱファンって、一人いても凄いパ ワーが貰えるんスよね。

「“なのに一万人だと、パワーも一万 倍っスよね”…かーっ、臭ぇ台詞言いや がって」

大きく切られた写真が場を占めるページ では、文字数なんてさほど多くはない。 つまりは活字慣れしていないオレでも、 読むのにそんな時間がかからない訳で。

さくっと読み進めてオレは次のページに 進んだ。 そこで、あまりにも馬鹿げた内容を見て しまったオレは、一万人の写真を見た時 とは別の意味で驚いた。

「ああそれ、海常の黄瀬君やっけ?」

「のわっ!?」

そんな際にひょいと後から突然に出て来 たのは今吉サンで。 とりあえず驚いたオレは声をあげた。 ふんふんと頷きながら雑誌を覗き込み 「一万やて」と呟く。 そうしてそれから、何でも無いように、

「凄いやんなあ…ところで青峰、その本 人が来とるねんけど?」

「は?」

耳を疑う間もなく、条件反射で振り返っ たオレは、黄瀬の姿を視界に収めた。 その反対の、黄瀬も同じだったらしい。 パアと黄瀬の表情が輝くのが遠目に見て もわかる。

「青峰っちー!」

「はあ?黄瀬!?」

キラキラと笑顔を輝かせて声をあげる黄 瀬に、オレは素っ頓狂な声をあげた。 背後から「にしてもその内容、ほんま熱 うて妬けるなあ」なんて背を叩かれた が、そんな事は無視をするに限る。

今吉とすれ違う様にして入ってきた黄瀬 に、オレはとりあえずどつきを入れた。

「で、お前はなんで桐皇に来てんだよ暇 人か!」

「ったあ!‥青峰っちにオレの素敵な特 集が載った雑誌を見せてあげようと思っ ただけっスよ!」

どつかれた肩をさすりつつ、涙目の黄瀬 はぶうと口を膨らませる。 しかし直ぐに、目ざとく雑誌を見つけた 黄瀬は嬉しそうに破顔した。

「ってもう持ってるじゃないスかー青 峰っちのツンデレ!」

「デレてねえよ!さつきに押し付けられ ただけだっつの」

またまたーと嬉しさを隠さない黄瀬に は、もう何を言っても意味は成さないだ ろう。 くそ、だけど仕方無い。 そうなったら聞かないなんて事実は、そ れこそ馬鹿みたいに身に染みてしまった から。 ならば突っ張る必要も無いよなと、オレ は黄瀬を引き寄せた。

☆一万と聞いて何が思い浮かびますか? ★難しい質問っスねー(苦笑しながら) あ、馬力とか? ☆馬力ですか? ★そうっス。オレの知り合いに一万馬力 みたいな人がいるんスよ(笑) でも、その人といると何だかオレまで万 倍馬力が出る気がするんスよね!

万倍だってさ!

(とても嬉しそうに、一万ワットの笑顔 を見せる黄瀬のそれはオレのおかげだそ うだ)



をば !』のさあや様より一万打記念に頂きました!
一万、と絡めた小説ですよ!私には無理です!←
そして桐皇の皆さんまで!青黄を語るのに彼らは必要不可欠ですよね(私的に)
本当に素敵な小説ありがとうございました!これからもよろしくお願いします(*^_^*)



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