(赤黄) 「ただいま、涼太」 鍵の開く音に、浅い眠りから目を醒ます。 ドアが開いて、赤司っちがスイッチを押したのか、小さな灯りが点る。 「おかえりなさい、赤司っち」 「今日もいい子にしてたな」 冷たい鎖の鍵を外して、赤司っちは俺にキスをする。 「今日はここでしようか」 「……赤司っちが、良いなら」 そのまま、ゆっくりと混じりあう。 小さな灯りは電球が切れたのか、いつの間にか消えていて。 でも月明かりで赤司っちはちゃんと見えるから、気にならない。 赤司っちの家に、鎖で繋がれるようになって、三年ほど経つのだろうか。 正確な時間を測る術を俺は持たないから、わからないけれど。 俺の仕事は、赤司っちが仕事から帰ってきたら、身体を繋げる、それだけ。 その後一緒に食事をして、お風呂に入って、隣で眠る。 それ以外の時間は眠っているか、この部屋にある本を読んで過ごす。 高校時代、赤司っちの家によく出入りしていた頃には、一度も見たことがなかったここ。 トイレもお風呂もついているのに、大量の本と大きなベッドと、届かない位置に鉄格子の嵌まった窓があるだけの、不思議な部屋だ。 「行ってきます、涼太」 小さな声に目を覚ますと、俺の腕にはいつもの通り、冷たい鎖が繋がれていた。 「行ってらっしゃい、赤司っち」 額に落ちてくるキスに、目を閉じる。 目を開けたらやっぱり、赤司っちはいないのだろうと思いながら。 以前一度だけ、聞いたことがある。 どうして鎖を繋ぐのかと。 涼太がいなくなるのがこわい、とあのひとは言った。 …今もそう、思い続けているのだろうか。 伝えてあげたかった。 逃げる気などないし、今更赤司っちなしで生きられるほど強くもない。 今の俺の願いは、ひとつだけなのだと。 最期の時まで、俺を縛り続けてほしいと。 どうか私を食べ尽くして 20120616〜20120714 |