(榛準) 「高瀬準太、お前俺と付き合え」 同じ県内、同じ学年、同じポジションのそいつ。 俺なんかよりよっぽど注目されてて、投げる姿は男から見てもかっこいい。 「……はぁ?」 そいつの発言内容が理解できないのは、ひょっとして俺の脳が足りないのか? …いや。断じて違うはず。 首を傾げる俺に、そいつが差し出したのは。 一枚の写真だった。 「これ、ばらまかれたくなかったらな」 そこに写ってるのは俺だった。明らかな隠し撮りだ。 着ているのは中学の制服。そして口にくわえているのは。 …いわゆるシガレットチョコ、というやつだった。 「この写真なら、誤解されても仕方ないかもなー」 確かに、画質が悪い写真は、本物のように見えなくもない。 「さぁ、どうする?」 俺に選択権は、ない。 その日から、今日で丁度半年になる。 俺は未だに、榛名の目的が読めずにいる。 あいつは俺の名前を呼び、会いに来て、ジュースを奢り、笑いかける。 半ば脅しだったのは最初だけで、今のあいつは俺に友好的に見える。 誕生日にはプレゼントを寄越すし、風邪を引けば見舞いに来るし。 『準さん、榛名と仲良かったのォ?』 そう、利央が言うとおり、俺とあいつは誰から見てもただの仲良しだ。友達として、俺に接しているように見える。 『俺と付き合え』 その言葉の方が、嘘だったように思える。 だって、あいつは。ただの一度も。 俺に『愛』を囁かない。 それならいっそ、あんなふうに近づいて欲しくなかった。 普通に、来てくれればよかったのに。 最初の言葉で、俺の頭は勘違いをして。 曖昧な今の関係を、苦しくさせる。 いつしか胸に芽生えた、こんな気持ちはいっそ捨ててしまいたい。 でも、あの日のあいつの瞳は、未だに俺を許さない。 ──あいつは、自分勝手だ。 俺ばっかり、こんなに好きにさせたくせに。 そう思いながら、今日も俺は、あいつの笑顔に溺れていく。 真意など知らないままに。 自分勝手なだけの愛の歌 |