(黒黄) 「でねー、そのあとはっスね、付き合ってって言って…」 目の前で中学時代のチームメイトが楽しそうに目をキラキラさせて語っている。 彼の奢りであるシェイクが手の中になければ、とっくに帰っていたところだ。 話半分にしか聞いていないが、どうやら彼が出演する恋愛ドラマの内容らしい。 ていうかそれネタバレというか、言っちゃったら見るときつまらなくないですか?僕は見る気ないですけど。 「そのあとはヒロインにいきなりキスして…黒子っち?ぼーっとしてないスか?具合悪い?」 「いえ」 具合が悪いのではなく君の話がつまらないんです、とは言わないであげた。 「ヒロインには彼氏がいたんスけど、そこから俺を好きになって付き合い始めるんスよ。素敵っスよね」 素敵なのか、聞いてなかったから分からないけど。 「そんな恋、できたらいいんスけどね」 「そうですか」 一応周りを確認。奥の席だから大丈夫。 少し行儀は悪いけれど、テーブルに手をついて背伸びをして。 「…くろ、こっち…」 赤い唇に、そっと噛みついた。 「…どうですか、僕の方、好きになりましたか?」 「……最初から黒子っちしかいないっス。俺には」 ふれあったのは一瞬で、元の姿勢に戻った僕が黄瀬君に問えば、彼は赤い顔のまま目を逸らす。 「そうですか。じゃあ黄瀬君」 さぁ、始めてみませんか。 君が素敵と言っていた、そのドラマのように甘い恋を。 「僕と付き合ってくれませんか?」 始めてみませんか? 20121010〜20130301 |