06 決闘にて
今までは薬草学や占い学などで実際杖を使うことはなかったが、今日名前がここに来てから初めての実践授業が行われた。
科目は闇の魔術に対する防衛術で、二人一組になって軽い決闘を行うとのこと。
誰と組もうか悩んでいると、オリオンが1人立っているのが見えた。
「オリオン余りもの?」
「えー、お前かよ」
「あら私じゃ嫌ですかい」
「弱い者虐めみたいになるじゃねーか」
「はぁ?お言葉ですけどねぇ、私強いよ?オリオンなんて木っ端微塵だかんな!」
ビシッとオリオンに指をさして名前は言う。オリオンはめんどくさそうに眉間にしわを寄せていた。
他の組も決まり準備ができたので、オリオンも渋りながら名前と向き合った。
周りからは「あーあ、ブラックと組んだのか…終わったな」なんて思われていたが、当の本人はオリオンが余っていた理由も知らないので全く気づいていない。
「手加減してやるよ」
またいつものようにバカにしたような態度でオリオンは私に言う。その態度にカチンときて私は言った。
「もしかしてさぁ…自信ないの?」
挑戦するような笑みでそう言うと、オリオンの杖をなでていた手が止まる。
「ちげーよ」
「だってさぁ、私の力見たことないじゃん?負けても、手加減したんですぅみたいな理由できるし?」
うひゃひゃと笑いながら言うとオリオンもカチンと来たようだった。
「……そこまで言うなら本気でやってやるよ!」
あっつかいやすーい、と小声で言う名前の周りでは恐怖の顔を浮かべる同学年の子達の顔があった。
「ちょっと…まずいんじゃない?ブラックが本気になったら教室も吹っ飛ぶわよ…!」
「でもあそこまで自信たっぷりに言ってるんだからかなりできる方なんじゃ…」
「いや例えできてもブラックだよ?無理でしょ…」
真っ青になりながら話し合う級友たちを余所に、先生は言う。
「はじめっ!」
合図が出た瞬間、名前はニヤリと笑って呪文をオリオンに向け始めた。
「おまっ…!無言呪文!?」
「へっへーんだ!だから言ったでしょ、私強いって。でもオリオンも無言呪文できるとは思ってなかったよ〜」
ひゃらひゃらと笑いながら余裕で呪文を連発する中、オリオンもオリオンで無言呪文で返す。
防衛と攻撃の呪文を一瞬の隙もなく交互に打ち合い、周りは自分たちの決闘を忘れてただ呆然と二人を見ていた。
呼吸を忘れさせるくらいの、二人を包む空気が周りを遮断させる。
「あの子あんなに強かったの…?」
お互いすれすれの所に呪文が飛び交い、生徒たちがただ驚いている中「ちょっと!杖を取るだけなんですよ!?」という先生の仲介が入り、この勝負は中断されてしまった。
「…お前普通に強いな」
「(は?普通?)オリオンも普通に強いね?」
乱れた息を整えながらお互いは思う。
「「(こいつ対抗心強すぎじゃね?)」」
なんやかんやで防衛術の授業は終わり、今日の授業は全て終了した。
夕食の前に荷物を置こうと談話室に戻る。
みんな直接大広間に行ったのか談話室には誰もいなかった。
暖炉前にある長いソファに目がいく。
ここ、いっつも人に使われてるんだよねー
通路側に背を向けた居心地の良いソファにふと、体を預けた。
――久しぶりに、あんな動いたな
先程のオリオンとの戦いを思い出して少しにやける。今までこんなに魔法を爆発させたのはジェームズたち仕掛人と遊ぶ時以来で。
私たちにとっては遊びでも、よくリリーに怒られたものだった。「ポッター!みんなが迷惑してるわ!…それに名前、あなた一応女の子なんだから…もう。」
「リリー…元気かな」
静かな談話室でパチパチと火の爆ぜる音を聞いていたら、ウトウトしてきて少し目をつぶった。
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兎の夜遊び