05 魔法薬学のお時間



カゲロウを鍋に一匙入れると、ゴポリと音を立てて透明だった液体が途端に粘土色の緑に変わった。


「よっし、できた!」


大鍋をかき混ぜて、製作した目の前の液体をすくう。落としてみるとボタリ、ボタリ、と塊を作って鍋の中に落下した。


周りを見渡すとまだ完成している人はいないようなので、どうやら完成品第一号みたいだ。
カチャカチャと道具を整理していると、スラグボーン先生が私の近くに来て言った。


「名前、もう作り終わったのかね?これは高度な技…だ…」


スラグボーン先生が私の魔法薬を覗き込んで言う。


「えっ、ほんとですか!?いやー今回は結構上手くいったって自分でも思うんですよね!嬉しいですわー」


うへへーと笑いながら照れていると、スラグボーン先生は無視してリドルの所へ行く。

えっ、どゆこと


「…トム、もう作り終わったのかね?」

「はい、スラグボーン先生」


ちょうど作り終わったらしいリドルが道具をカチャリと置いて前を見た。


「ちょっと苗字に完成品を見せておくれ」


あれ、さっきまで名前呼びだったのに名字になっちゃったんだけど。

よく分からないまま立っていると、リドルが魔法薬を持ってくる。


「……」


リドルが持ってきた魔法薬を見てみると、それは綺麗な薄ピンクでサラサラとした液体だった。次に私のをもう一度見てみると深緑色で粘土のような物体。

えっ、なにこれ


「…トム、苗字に教えてやってくれんかね」

「分かりました」

「頼むよ」


スラグボーン先生は私に憐れみの目を向けて去っていった。

…いや、まぁ魔法薬学は前から苦手だったけどさ…うん。今さらへこむ事なんてないけどさ…今回はできた気がするんだけどさ…


「元気だして、僕も手伝うから」

「…ありがとうございますグスッ」


出てきた涙を拭うと、近くにいたオリオンが覗きにやってきた。


「名前もう作り終わっ…うわっくさっ!何だこれドブの匂い!?くさっ!!」

「うるせーよバカ!!!」


引いてきた涙を再び浮かべながらオリオンの頭をパァンッと叩いた。








「違うよ名前そこは…」

「おいグラムもう1回やり直せ、今の4グラムも違っただろ」

「……使う道具、それじゃない」


気付けば私の周りにリドルを初め、オリオンとアブラクサスもいて。


「うわぁああ魔法薬なんて将来使わないじゃん…!」


グスグスしながらもう一度満月草のグラムを計る。

4グラム変わろうが大した差なんてないじゃん!んだよオリオン細かいことばっか気にしやがって。こいつ将来絶対はげるな……うわっ禿げたオリオンとか超おもしろいんですけどー!!プークスクス


「いだっ!何で殴んの!!」

「いやなんかムカついたから」


早く授業終わって強制終了しねーかな、なんてオリオンを見ながら思ったが、授業は意外に長いもので。
たった一コマでここまで疲れた授業があっただろうか。


「できた…!!」


リドルとオリオンとアブラクサスの甲斐があり、なんとかダークピンクの薬ができあがった。
小さな試験管に入れてそれを前に出しにいく。

完成品は本当は薄ピンクみたいだけどね、まぁ細かいことは気にしちゃ駄目さ。


ふぅ、と一呼吸つきながら元の場所へ戻ると、3人は片付けてくれていた。

うぉお、優しいな。

私も片付けに加わると、リドルが私に聞いた。


「…名前は薬作るの初めてなの?」

「いや…ずっと前から作ってるはずなんですけどね…」

「前の学校で?」

「あ、はい。そんなところです」


オリオンがドブの匂いの薬を捨てながら言った。


「今までどうやって授業受けてたんだよ」


おぇーと臭そうな顔をしているオリオンに「先生にも諦められてたよ」と肩をすくめながら言う。

ていうか前はジェームズとシリウスがネタにしたり、悪戯に使ってくれたり笑いになってたんだよ。
あれもあれでムカついてたけど、憐れまれるよりはあっちの方がよっぽどいいよ。


…頑張ろう。そう思った魔法薬学の授業だった。



兎の夜遊び


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