04 一抹の不安
顔を洗って、緑色のネクタイと新調された制服を着て鏡の前に立つと、なんだか変な感じがした。
今日からスリザリンの生徒としてのスタートを切る。
グリフィンドールの制服を5年も着てただけあって、スリザリンの制服にやはり違和感を感じた。
オリオンにだけここに来た事情を知られているので、都合がいいとして、今回は組分けをせずにスリザリンに入ることになったのだった。
これからうまくやってけるかなーなんかスリザリンってすっごいお金持ちってイメージだし、私純血主義とかそういうのないし。
あ、でも50年前ってことはそういう思考なかったりするのかな?
腕組みをしながら鏡の前に立っていると同室となったソフィア・フリントが洗面所に入ってきた。
「おはよー」
「おはよ」
こちらに一瞥したあと素っ気なく返事をして、顔を洗うソフィー。彼女は私に全く興味がないみたいだ。
私は洗面所を出て、朝食に行くために談話室を通ると、こちらに背を向けてソファに座っている黒髪が見えた。
「おっ、オリオンじゃーん」
「名前、」
オリオンの座っているソファの背もたれによりかかり、軽く頭にチョップをかけて話しかけると、少しだけ不機嫌そうなオリオンがこちらを向いた。
なんだこいつ、かわいいな。
「おはよう、名前」
ふと顔を上げるとオリオンの前に座っている人がいた。
「あー…リドルくん、おはようござ…うわっめっちゃ美人!!」
にこにこと人のいい笑みを向けるリドルの隣に目線をやると、シルバーブロンドの髪色の人がいて思わず感嘆の声を漏らす。
声と共に身を乗り出すと、少したじろいだようだった。
「……名前・苗字」
「あれ、名前知ってるの?」
「昨日大広間で言ってた人ですよね」
じゃっかん警戒したような顔のままシルバーブロンドの人は言う。
「名前なんていうの?」
「アブラクサス・マルフォイです」
「アブラクサス!よろしくねー」
にひひ、と言いながら手をさしのべると「オレの頭の上でやり取りすんじゃねぇよ」とオリオンに手をはたかれた。
そのまま四人で大広間に行き、席につく。
トーストと目玉焼きとベーコンなどを適当にお皿に乗っけて食べていると、リドルが思い出したように言った。
「そういえば一時間目は薬草薬だよ。教科書とかある?」
「あー今朝ベッドんとこに届いてましたわーありがとうございます」
モグモグと食べていると隣にいるオリオンがニヤリとバカにするように言った。
「お前呪文とかできなさそうだな」
「はぁ!?私めっちゃ呪文得意だしー超優等生だしー」
ハッと鼻で笑うオリオンに少し眉をよせる。
うわーこいつの自信たっぷりな顔、降伏させたいわー
イーと顔を送ってからまた食べようとすると、なんだか視線を感じた。
周りを見渡すと、蛇寮の生徒だけでなく、遠くのグリフィンドール生にもこちらを向いている人がいる。
あっれー何でこんな見られて…あ、あれか。私転入生だもんなーみんな気になっちゃってるのかしらーん
うんうん、と勝手に解釈して頷いていると後ろのテーブルから話し声が聞こえてきた。
「おいあの転入生!あのグループと話してるぜ!?」
「うわっやばいだろ…!ていうか隣オリオンじゃねーか!何で怖くないんだ!?」
「まだ気付いてないんだろ…。あーあ可哀想に…あいつ終わったな…」
小さな声で話してるつもりなのか分からないが、こちらにはダダ漏れで。アーメンと言う私に向けた声が聞こえてきた。
えぇえええ!!!ちょっと何今の…!!どーゆーこと!?
この先まだまだ不安がいっぱいだ。
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