02 序盤



あれからオリオンに引っ張られるように校長室に連れて行かれた。


「―――ということなんですよ、ダンブルドア先生!」


机に両手をバンッと置き、目の前にいるダンブルドア先生と、ディペット校長を見据える。

ダンブルドア校長本人がいるというのにも関わらず平気で校長席に座っているなんてどういうことか、なんて初めて見たとき思ったけれど、ディペット先生は現校長なのだと説明された。
ちなみにダンブルドア先生は副校長とのこと。



「では、君は未来から来たと…?そういうのか?」


粗方説明し終わると、ディペット校長が信じられないというような顔をして私にそう聞いてきた。



…そう、どうやら私はタイムスリップとやらをしてしまったらしい。


静かに隣で立っているシリウスの父だと思われる、オリオン・ブラック。それから目の前にいる髪が鷲色のダンブルドア先生。
この二人の登場で私の中では既にタイムスリップだという事は結論づいていた。


もともと魔法の世界だ。不思議なことも1つや2つあるはず。
だって悪戯仕掛人と探検しただけでも、たくさんの不思議な場所などを見つけているのだから。



けれども。



……さすがにこれはありえない。



私には今、実態がある。私という存在自体が過去に来ている。記憶の世界に行くならば、自分自身の存在は幻のようなもののはずなのに。


それに、何かの道具を使うことなしに時空を超えるなんて魔法の世界でもまだ不可能なわけで、ここに来るまでにいつも通りの日常を送っていた私にはどうやってここに来たのか分からない。
ということは戻る方法も分からないのである。


そんなこんなな思いを巡らしていると、ディペット校長とダンブルドア先生は私を見ながら話し出した。


「何しろ前例がないからなあ……私にもてんで分からないよ…。アルバス、何か考えはあるか?」

「わしもこのような事を聞くのは初めてじゃ。しかし世界は広いでの。調べれば何かしら出てくるかもしれん」

「そうだな、調べてみるとしよう」


私を見て話していたが、今度はちゃんと意識を私に戻し私に向かって話しかけてきた。


「ミス苗字、戻れる方法が見つかるまで好きなだけいなさい。ホグワーツは君の第二の家だよ」

「おっと、それからオリオン。このことは二人だけの秘密にしておくのじゃ、良からぬ者が君を利用しようとするかもしれんでの。…未来の情報は時として最も残酷な凶器となるものなのじゃ」


ディペット校長とダンブルドア先生はそう言って、安心させるようににっこりと微笑んだ。








「失礼、しました」


校長室を出て、螺旋階段を降りていると後ろからオリオンがついてきた。
無言でそのまま歩き続けていたが、もう朝食に降りてきている生徒もいるのでそのまま大広間に向かう。


結局、校長に話しても何も解決できなかったし、頼みの綱のダンブルドア先生ですら戻る方法は分からないって言ってたし。


あー…私ここで生きてけるのかな。まぁ戻れるまで生きていく心配はしなくて大丈夫そうだけどさ。

もし。もし、戻れなかったら?将来どうなるの?何年くらいここにいることになるの?もし将来家族ができて突然元の時代に戻ったら―――……いや、考えすぎか。


でも、


もう、みんなには会えなくなる、よね


…………




……いや!!!いやいやいや!!


ハッとしてブンブン首をふって、辛気臭い気持ちを振り払う。


そうだよ、考え方によっちゃ凄い良い話じゃないか。人生やり直しができるんだよ?

しつこいジェームズもうるさいシリウスもいないし、怖いリーマスだっていない。リリーと離れるのはちょっと寂しいけど、ずっと頼りきってたからリリー離れできるいい機会だし。
それから勉強ばっか大好きなセブルスやレギュラスもいない!!


よし。


頬をパチンと叩き気持ちを入れ換える。


「……えーっと、じゃあ先生が言ってた通りこれからよろしくね。ていうかオリオン、監督生だったんだ」

「いや違ぇよ、監督生は――」


無心で歩き続けていたが50年前も後も校舎の形は一緒で。気がついた時には大広間の前に来ていた。




「オリオン、呼んだ?」


心臓に冷水をかけられたように、突然、ザァッと体温が下がった。


バッと勢いよく振り返ると、白い肌に紅い目。そして、温和そうにニコリと笑っている男の子が立っていた。



兎の夜遊び


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