01 fall in a past
大広間で夕食をとったあとは、談話室でしばらく他愛もない会話をするのが日課。
「ふあ…」
暖炉の温もりに当てられて欠伸をすると、隣にいるリリーがそれに気づいた。
「名前眠いの?名前が寝るなら私もそろそろ寝ようかしら」
「そんなっ…!リリーもう寝ちゃうのかい!?僕はまだリリーと話したいよ!!」
「おい私は?」
リリーを一度目にすると一気に周りが見えなくなるジェームズ。
「ほらジェームズ。また明日もあるから僕たちもそろそろ寝よう、もうこんな時間だ。名前、寝る前はおかし食べちゃ駄目だよ」
「そのセリフそっくりそのまま返すよ」
ポケットからチョコレートの包み紙が見えているリーマス。
「おやすみシリウスー。明日は骨投げて遊んであげるからね〜」
「うわっ、ちょ、やめろ!犬扱いすんな!」
髪をわしゃわしゃすると、いつも通り飽きない反応で返してくるシリウス。
「おやすみ…!」
内気なピーター。
「じゃ!」
「おやすみー」
「また明日」
手を振って別れて、最後にリリーに挨拶をして私は眠った。
ただの日常生活のほんの一ページ。思い返してみても特に何か特別な事はなかった。
朝起きて、授業があって、ベッドに入り。それから私は…どうなった?
寝てただけ、だよね?
「おーい起きろー」
遠い意識の中、ペチペチペチと頬を叩かれる感触がした気がした。
「もうちょっと、だけ…」
手を払う様に少し抵抗してまた寝ようとすると。
パシパシパシ…バチンバチンバチン!
「い゛っ!?いったぁああぁ!!リリー痛いよ!!私ジェームズじゃないんだからそんな扱い……って、あ、あれ?」
容赦ない力で叩かれて、赤くなったであろう頬を押さえる。
キッと涙目で睨んでリリーに文句を言おうとすると、そこにいたのは……リリーじゃ、なかった。
「……え、シリウス?ななな何してっ…!ここ女子寮だよ!?バカじゃないの!?」
シリウスを見て、一気に眠気も吹っ飛び驚愕する。
ちょっ、いくらシリウスが女好きでもこれはおかしいよ!!何?気づいたら女子寮ついてました☆みたいな?……シリウス頭大丈夫かぁああぁ!!!
ええええ、とただ口を開ける私にシリウスは少し眉を潜めた。
「…俺シリウスじゃないんだけど」
「へ?」
静まる空間。
何を言い出すんだこいつはと思いながらも、落ち着いて見てみると、…なるほど。かなり似ているけど、シリウスじゃない。
シリウスより、少し大人びた顔に長めの髪。…あ、跳ねてるとこは一緒だ。
あっれー、シリウス双子いたっけー?レギュラスならいたのは知ってるけど…誰だこの人?
急に落ち着いてきて、ふと周りを見渡すと、緑一色の部屋。
カーテンやベッド、天蓋など、全てが全て緑だ。
私の紅のタータンチェックパジャマがこの部屋で異様に目立っていた。
「あれ?スリザリンじゃあるまいし、どうしちゃったの私の部屋」
「いやここスリザリンだから。それとお前のじゃなくて俺の部屋、な」
もう何が何だか分からなくなってきて、頭をガシガシとかく。
私、夢遊病だったっけなー?
黙りこくっていると、目の前にいる彼が説明をしてくれた。
「あのな、朝いきなり蹴られて目が覚めたら、お前が隣でグースカと寝てたんだよ。ちなみにここはスリザリン寮。お前グリフィンドール生だよな?何で入れた?ストーカー?」
「は?違うわ。むしろ私が聞きたい質問だし」
「ふーん…まあいいや。そんなことよりお前名前なんて言うの?見たことない顔だけど」
私の顔を見ながら聞いてくる彼。
なんださっきから。こいつの偉そうな態度。
「…名前・苗字だけど。私だってあなたの事見たことないですなぁ。あんたは?」
「(なんだこいつ…)俺はオリオン・ブラック。名前聞いたことくらいなら、あるだろ?」
少し自慢気に、悪戯っ子のような笑みをして。彼は私にオリオン・ブラックと、そう名乗った。
「……聞いたことないわ」
ケッと笑いながら言うと、彼の整った顔が少し歪んだ。
(第一印象最悪な2人)
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兎の夜遊び