夏の日の出会い



まぶしい位に輝く太陽と、肌に焼き尽く紫外線。
それは沖縄では日常であり、私は気にせずにそれを持って空き地に出た。



「今日こそ、リフティング出来るように頑張るぞ!」



おー!と、ひとり腕を上げて気合いを入れ、手に持っていたものを地面に落とした。
落ちたそれ…白と黒の模様のサッカーボールは、落ちた反動で少しだけ浮き上がった。



「ていっ」



足を蹴りだして、ボールに当てようとするがボールには当たらず、スカッと空気を斬るだけだった。



「あれー?おっかしいなぁ」



ちゃんと蹴ってるはずなんだけどなぁ。と、ここ数日足がかすりもしないボールを眺めて呟く。



「よし!もう一回!」



どこか悲しげな気のするボールを拾い上げて、さっきと同じ事を始めようとする。
ボールを放して、足を蹴りだす。そこまでは、一緒だった。



「ヘッタクソだな」

「えぇっ?」



急に人の声がして、いつも以上に足は空回る。
驚いてその人を見ると、初めてみる顔の人だった。
ハネた赤い髪に太めの眉毛、金色の瞳。本土から来た人かな?



「え、えーっと…」



どう反応して良いか分からず、言葉が濁る。
そりゃあ、いきなり初めて会った人にヘタクソって言われたら、どう返事して良いか困ってしまう。

サッカーが下手なのは自分でも分かってるけど、改めて人に言われると少しばかりへこむ。
数秒間の沈黙を挟んで、こちらを睨むように見ていた彼が口を開いた。



「ボールをちゃんと最後まで見ろ」

「…へ?」



ため息のように吐き出された思いがけない台詞に、一旦思考が止まる。そんな私にはお構いなしに、彼は早くやれと催促する。
ボールを手にとって、地面に落とす。そのいつもの動作が、少しだけ鮮明に見えた。



「(ボールを…最後まで…)」



暗示をかけるように、ボールを視界の中心で捕らえながら、私は足を蹴りだした。



「わっ」



ポン、とした感覚と、浮き上がるボール。太陽に照らされたボールは、嬉しそうに笑った気がした。
弾かれたボールを目で追い掛けて、本能的に再び足をだす。


また、ボールが嬉しそうに笑った。



「わああっ出来たできた!すっごーい!」



1回、2回とボールは宙に舞い、地面へと転がった。
初めて出来た達成感に、おのずと心が踊った。



「ありがとう!アドバイスしてくれて!」



赤い髪の彼に向き直ってお礼を告げるが、彼は相変わらず睨むような、怪訝そうな表情だった。



「そんなモン、基本中の基本だろ?そんなのも出来なかったのに…やってて面白いか?」



たぶん、彼の心底の本音なんだろう。とてもじゃないが悪気は見えない。
私は足元のボールを抱き上げて、また彼に向き直る。



「出来ないけど、楽しいよ!」



今みたいに出来るようになるし、出来なくてもサッカーやるのは、楽しいよ!
太陽の光を浴びて笑うあいつが、太陽よりも眩しく見えて、不意に目を逸らした。



「…そうかよ」

「ねぇ、一緒にサッカーやらない?」



ボールを突き出す私に、彼はハッと鼻で笑った。



「あんたと俺じゃ、話になんねぇよ」

「えー」

「…もっとマシになったら、相手位はしてやるよ」



背中を向ける彼に、本当?と問い掛けると、上手くなってたらな。と返ってきた。
ありがとうと叫ぶあいつに、久しぶりな感情が引き出された。


(あいつとサッカーやるのが、楽しそうだなんてな)



* * *

まったく夢らしくない夢ですが仕方ない。
ただバーンにもサッカー楽しんでほしいという一心で書いてました。グランでいう円堂みたいなヒロインとのお話って事で。

しかしバーン難しいったらありゃしない!途中何度もアツヤの影がチラ付きました。
状況描写が無駄に楽しかったです。こういう書き方好きなんだ!

ちなみに、バーンはてんで駄目なヒロインに見兼ねて助言したって事で。
そういえばこの話のコンセプトが「面倒見の良いバーン」だった事を今思い出しました。


(10/02/18)
(10/03/20)



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