愛溺れ
「そ、それ以上はダメです!」
胸の前で腕をクロスさせて壁を作り、これ以上目の前の人の接近を許さないようにする。
「……どうしてだい?」
理解できないと言いたげな瞳で、怪訝そうに眉を寄せる彼…アフロディ。
それもそうだろう。付き合ってはいないものの、アフロディと私は互いの気持ちを認知している。
「ど、どうしても、です!」
胸の前で組んだ腕はそのままに、気迫に負けて思わず一歩下がる。
アフロディはそんな私が気に入らないのか、不機嫌な表情のまま距離を詰めてきた。
「それは答えになっていないね」
「だ、ダメ…!」
自然と距離を置こうと、私の足は後退する。
だけどアフロディは足を止めず、どんどん二人の距離が縮められていく。
「円堂君や他の皆には平気で触れるのに、」
なぜ僕だけは君に触れてはいけないんだい?
アフロディの歩みが止まった時は、私の背中には堅く冷たいコンクリートの壁がぶつかった。
彼のの表情を伺うと、先程とは違って、瞳に哀しみが宿っているように感じられた。
「それは…」
「この際だから言っておくよ」
言葉につまって俯いていると、アフロディが一言呟いて一歩足を進めた。
私と彼の距離はほぼなくなり、耳元に口を寄せられれば、彼の長い綺麗な金髪が体に掛かった。
「僕は、名前…君の事を愛しいと思っている」
吐息がかかる程近く、耳元で囁かれる。
おのずと心臓はドクンと脈を打ちぎゅっと締め付けられ、顔に熱が集中する。
体を支配しそうな心音にきつく目を閉じて、平常心を取り戻そうと試みるが、アフロディの手が頬に触れた事で無意味に終わった。
目を開くと真剣な赤い瞳と視線がぶつかって、右頬に添えられた手の感覚にまた顔が熱くなる。
真剣な赤い瞳と添えられた手、ドクンドクンと煩い心臓の音に溺れれば自分が壊れそうで、頭の片隅で「だから嫌だったのに」と呟く。
「名前、君の答えを聞かせてほしい」
ああ。もう私は貴方に溺れて抜け出せないみたいです。
愛溺れ
貴方に溺れた責任、とって下さい。
* * *
こっちが恥ずかしくなる様な細かい描写を書きたくてこうなりました。
あと感情移入しやすい感じに…とにかく夢らしい夢を書きたかったんです、はい。
照美大好きだ…!!ちょっと意地悪な位がちょうど良い
(09/12/05)