桐皇高校男子バスケットボール部は、インターハイで準優勝した。夏休み明けの話題はそれで持ちきりだった。始業式で、校長から表彰を受けたのはもちろん今吉である。あんな胡散臭い男が代表とは、男子バスケットボール部はさぞ大変だろうとぼんやり思った。
時間は流れ、受験もいよいよ本番。周りは大学が決まった人間が出始めていた。私もその中の一人だ。指定校推薦とは本当に素晴らしい制度である。
「WC見にきぃへん?」
相変わらず、私の席の前には今吉。何度席替えしようと、ずっと変わらず今吉だ。明らかにこいつは何か細工しただろう。さすが陰険メガネである。
「WC?」
「年内最後の大会や。弟やワシの勇姿、見たない?」
今吉の勇姿など、1ミクロンも興味はないが、弟のバスケは興味がある。そう考えた私はWC観戦を決意した。
12月某日、WC第一試合。桐皇学園対誠凜高校。
幼馴染ちゃんに聞くと、相手はWC初出場。2年前にできたばかりの新設校。そして、夏の大会で桐皇に敗れているらしい。今年は出場校数の関係で、初戦から同じ都内の高校がたたかうらしい。
なんだかよくわからないけど、明らかに分が悪いのは誠凜だというのは理解できた。

試合は、なんというか、すごかった。小学生のような感想だが、本当にすごかった。流れが速すぎてどこにボールがあるのかわからない。ただ、弟がボールをよく持っているのはわかった。ありえないスピード、ありえない体勢からのシュート、本当にあいつは私の弟なのかと疑うほどだった。
前半、相手チームは弟にはまるで歯がたたなかった。付かず離れずな点差。前半戦は同時の今吉の3Pシュートで終わった。私は結局、何が何やらわからない状態で頭が疲れた。
後半が始まって、じわりじわりと相手チームが弟に食らいつくようになった。相変わらず速いスピードで試合が進む。その中でも、弟は楽しそうだった。本当に、久しぶりにみる、いきいきとした弟の姿があった。
試合は、桐皇の敗北で終わった。本当に僅かな差だった。
終わった後の弟の表情は、いつかのころと同じ晴れやかな笑顔だった。


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