弟と幼馴染ちゃんはほとんど変わらなかった。朝は幼馴染ちゃんが迎えにきて、帰りは弟が彼女を送って行く。ただ変わったのは、幼馴染ちゃんはもう「大ちゃん」と呼ばず、弟はバスケの練習をしなくなったことだ。本当に、それしか変わらなかった。
私は高校三年生で受験生の年。二人のことを心配している暇は無かった。
「なまえはどこ志望やったっけ?」
今吉が私の前の席に座っていた。ニヤニヤと何時もの表情を浮かべた奴に、私は意味もなく苛立つ。
「どこだろうね。」
「決めてないん?」
「ある程度ね。」
ふーんと興味なさげな声を出されたのと同時に私は参考書に向き直った。ジリジリと肌を焦がす太陽光が痛い。
「インターハイ、見にきぃへんの?」
ピタリと止まる。インターハイ、彼が言うのだからおそらくバスケのだろう。そちらを見やると、彼は先ほどとおんなじ、ニヤニヤとしながら私を見ていた。奴は私と、バスケ部エース、青峰大輝が姉弟だと知っている。
「あいにく、受験勉強投げてまで弟の部活応援するほど姉弟仲が良いわけじゃないんでね。」
「来ないんか。」
「めんどう。」
そこで初めて今吉はニヤついた顔から苦笑へと表情を変えた。
「つれへんなー。息抜きも必要やろ?」
「息抜きするほど勉強煮詰まってませーん。」
私はそう言うと、カバンからiPodを取り出して、外界からの音をシャットアウトした。
今吉が「ほんまつれへんわ。」と言っていたのは気づかないふりをした。


[ 5/7 ]

prev next



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -