小説 | ナノ

バーンとガゼル


過去捏造


















―思い出の中の君に、



君と一緒なら





ジェネシス計画。
父さんがその計画を実行にうつしてから、1週間が過ぎた。
俺たちはエイリア学園としてのナマエを与えられ、チームに分けられ、ランクをつけられた。
正直俺にはよくわからないところもあるけど、父さんが望むのなら、俺たちはそれに従うだけだ。
それでも、まだこの新しいナマエには慣れなくて。
慣れなくてはいけないのだけど、慣れることができなくて。
真っ先に順応したグランには溜息をつかれている。
ガゼルはまだ、慣れてはいないようだけど、俺みたいに間違えたりはしない。
俺もいつか、あいつらみたいに今のナマエに慣れてしまうのだろうか。
変わって、いくのだろうか。


日付も変わろうかという時間になって、突然部屋のドアが小さくノックされた。
こんこん、こんこん、
呼びかけられているような、そんな音。

「誰だ?」

言いながらドアを開く。
そこに立っていたのは、いつもの練習着ではなくフードのついた長袖Tシャツを着て俯いた、ガゼルで。

「ガゼル?」

ガゼルは俯いたまま何も言わない。
おーい、と顔を覗き込むと、ガゼルの眉は下がり、口は真一文字に引き結ばれていた。

「おい、どうしたんだよ、」

ガゼルは何か言いかけて、またすぐに口を閉じる。
こうなったらなかなか言わないだろうから、まあとりあえず、部屋の中に入れた。
部屋の中には入ったのに、ドアの目の前で立ち止まったままのガゼルに首を傾げる。
どうしたんだ、今日のこいつは。
なんか、変だ。
ガゼルはちらり、と俺の部屋の電気を見上げて、ほっとしたように息をついた。

「まめきゅうが、」

「は?」

ぽつり。ようやくガゼルが声を出した。
まめ?

「私の部屋の豆球が、切れてしまって、」

寝ようとしたんだが、とガゼルはそこで言葉を切る。
豆球が切れたって、今から寝るなら別に関係ないような、とまた首を傾げて。
ああ、そうだ、思い出した。
こいつは、昔から真っ暗だと眠れないんだ。


お日さま園にいた頃、まだジェネシス計画など始まっていないような頃。
やっぱり真っ暗で寝られない、と俺の部屋にきたことがあった。

―くらくてねられないの、はるや、

泣きそうな顔をした風介の顔を思い出す。
あの頃は俺も真っ暗だと寝られなくて。
特に風介は寝つきも悪くて、俺なんか寝転がったらすぐに寝てしまうからいいけど、暗い中でじっとしているのは、怖いと思う。
だから、確かふたりで手を繋いで寝たんだ。
俺はやっぱりすぐに眠ってしまったから、風介がいつ寝たのかなんてわからなかったけど、朝起きたら、隣で風介が寝ていて。繋いだ手は、そのままだった。


変わってなんか、なかったんだ。
ガゼル、いや風介は。
あの頃と、一緒。
俺が何も言わずに色々思い出している間、ガゼルは眉間に皺を寄せて俺の顔を覗き込んでいて。

「聞いているのか、バーン、」

「ああ、聞いてる聞いてる、」

慌てて頷くが、ガゼルの眉間の皺はそのままだ。
誤魔化すように、寝ようぜ、とガゼルの手をひく。
部屋の電気を消して、ふたりで並んで俺のベッドに寝転がる。
あの頃にいつ戻れるのかなんてわからないけど。
いつまた本当の名前で呼べるようになるのかなんてわからないけど。
今はまだ、わからないことが多いけど。
ガゼルは、風介はいつだって一緒にいるんだから。

ぼんやりと、豆球のオレンジ色の光を見上げた。
それを見ている間に、どんどんと意識は沈んでいって。

「おやすみ、ふーすけ、」

呂律の回らなくなった声でなんとかそう言った。
寝つきの悪い風介が、早く寝られるといいな、と思いながら。

「おやすみ、」

晴矢、と。
少し笑ったような風介の声が、聞こえた気がした。
















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続バンガゼの日おめでとうございます!
10月10日なのでマスターランク時代バンガゼでした^^



10.10.10.






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