小説 | ナノ

晴矢と風介





―ぴんくとみずいろ




チューリップ






「はい、これ風介と晴矢の、」

と、ヒロトに渡されたのは、くしゃっとなったカラフルなゴムだった。
シュシュという、今はやりの髪留めらしい。
私や晴矢の短い髪の毛をどうやって括れというのだ。
使い道がないと思っていたシュシュを引っ張ってみたり、と玩んでいると、ふと使い道を思いついた。
思い立ったらそく行動、とソファでごろごろとゲームをしている晴矢の背中に、無言で乗り上げる。
晴矢は一瞬、潰れたような声をだしたが、それ以上は何も言わずにカチカチとひたすらに指を動かしている。
晴矢のワックスで固められた紅い髪の毛の、頭頂部をそっと掴む。本人は炎だと言いはるが、どう見てもチューリップだ。
チューリップを崩さないように気をつけながら、その根本にヒロトから渡された淡いピンクのシュシュを巻き付ける。

「おい風介、お前何やってんだよ、」

さすがに髪の毛を引っ張られれば気になるのか、晴矢が首だけ私の方へ向けてきた。

「ヒロトから渡されたんだ、」

それ、と晴矢のチューリップを指差せば、晴矢はシュシュをぐいぐいと引っ張って、なんだこれ、と不思議そうな声を出した。

「シュシュという、最近はやりの髪留めらしい、」

「いや、だからなんでそれを俺につけんだよ、」

晴矢はシュシュをはずそうと引っ張るが、日ごろ髪の毛など結ばないからどうすればいいかわからないようだ。

「はずせよ、」

「いやだ、」

逃げるように晴矢の背中から降りて、そのまま離れようとしたら、晴矢に腕を引っ張られてソファに、正確にはソファに座った晴矢の腕の中に、背中から倒れこんだ。

「…痛い、」

「悪い悪い、」

全く悪びれもなくそう言って、晴矢は私の手首をまじまじと見た。
ヒロトから渡された、もうひとつの水色のシュシュ。

「これがシュシュ?」

「ああ、」

晴矢はふーん、と私の手首にはめられたシュシュを引っ張り、そのままするりと手首からはずしてしまった。
そしてそのまま私の髪の毛をぐい、と引っ張る。

「い…っ、痛いばか!」

頭頂部の髪の毛を無理矢理引っ張られ、痛みにうっすら涙が滲んだ。
しかし晴矢は無言でぐいぐいと髪の毛を引っ張り続ける。
ようやく解放された後も、頭頂部に妙な感触が残っていて。
違和感の残る頭頂部に手を持っていって、そこでようやく気付いた。
そこにはシュシュと、無理矢理括られた髪の毛がぴょん、と跳ねていた。

「お揃い、」

にっ、と笑った晴矢がやけに嬉しそうだったから。
頬を引っ張るだけで許すことにした。



お互いシュシュのはずしかたがよくわからなくて、髪の毛を散々引っ張って涙目になることなど、その時は思いつかなかった。
















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こねたのはずが長くなったのでこっちに。
あほですいません^^

10.07.31.






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