小説 | ナノ

円堂と涼野


雷門引き抜き後
3topは幼馴染で仲良し















―少しだけ、




鉄塔広場にて






「おーい、涼野ー!」

バカみたいにうるさい雷門のキャプテンの声に、涼野は思い切り眉を顰めた。

「円堂守、」

「ん?なんだ?」

うるさい、と言う前に言葉を遮られ、涼野の機嫌はますます降下する。
幼馴染である基山は円堂をひどく気に入っているようだが、正直涼野には理解できない。
ヒロトはこんなうるさいやつのどこがいいんだ、とっさに呟いた涼野に、円堂は何か言ったか?と首を傾げる。

「…なんでもない、」

もう会話をするのも面倒だと視線をそらせば、なあなあと両手をとられた。

「っ、何を…っ、」

焦ったように腕をひく涼野を、正面から真っ直ぐに見つめて、円堂はにっ、と笑った。

「良いとこ、連れて行ってやるよ、」

ほら、行くぞ、と。涼野の答えも聞かずに、円堂は手をとったまま強引に走り出した。



「ここ、稲妻町で一番いいとこなんだぜ!」

ついでに俺の特訓場、と木から吊るされた大型のタイヤを叩く円堂を、涼野は無言で睨みつける。
行き先も告げられずに片手を繋いだまま走られ、この鉄塔広場に招待された涼野は、肩で息をしていた。
円堂はタイヤを相手にひとりで特訓をはじめ、涼野は少し離れた場所で呼吸を整えながら、その様子を見ていた。

「円堂守、」

「ん?」

ばしん、と身体中に響くような音をたてて円堂にがっちりと受け止められる、タイヤ。
何度となく繰り返されるそれの間に、涼野は口を開く。

「なぜ、私をここへ連れてきた、」

「んー、」

ぐっ、と円堂に放られ、吊るされたタイヤが弧を描く。
もう一度タイヤを受け止めると、円堂はぱん、と手を払い、腰に手をあてて涼野のほうへ身体を向けた。

「お前さ、もうちょっとサッカー楽しめよ、」

「…は?」

ぽかん、と口を開けてしまった涼野に、円堂が近づく。

「もうエイリア学園とか関係ねーんだからさ、もっと楽しくやろうぜ、」

お前、なんか無理してるだろ、と肩を叩かれ、涼野の頬がかっ、と朱くなる。

「そんなこと…っ!」

涼野は否定の言葉を口にしようとするが、自分を真っ直ぐに見つめる円堂に気圧されたように唇を噛んだ。

「ヒロトや南雲も心配してるみたいだしさ、」

「ヒロトと、晴矢が…?」

幼馴染の名前をだされ、涼野の肩から力が抜ける。
それを確認すると、円堂は足元のサッカーボールを拾い上げ、涼野に向けて、両手で掲げた。

「なあ涼野、」

夕日を背負うように立つ円堂が眩くて、涼野は目を細める。

「サッカー、やろうぜ!」

涙腺が痛むのは夕日のせいだと決めつけて、涼野は小さく頷いた。



(円堂守、)
(なんだ?)
(今度、晴矢とヒロトも連れてきてもいいか、)
(ああ、もちろん!)


(ヒロト、円堂守のどこがいいのか、ほんの少しだけ、わかった気がするよ。)















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友人とあみだくじでペアを決めた結果。
南涼、円←ヒロ前提だといいな。


10.07.05.加筆修正






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