小説 | ナノ

晴矢と風介


学ぱろ
幼馴染設定

















―永久に、



放課後の告白





終業時刻を2時間も過ぎれば、教室に残っている生徒などはほぼいない。
最終下校の時間までも、あとわずかだろう。
そんな時間に、私は未だ教室に、自分の席に座っていた。
机の上の紙切れと睨みあってはや数時間。
この紙が配布された日から数えれば、もう2週間にもなるだろうか。
手に握ったシャーペンをくるくると回して溜め息をつく。
進路希望調査。
高校3年の7月。この時期に志望校が決まっていないのがどれくらい危機的かくらいわかっているつもりだ。
だが、全く思いつかないのだ。行きたい大学もないし、極めたい分野があるわけでもない。
ただ、与えられた課題をこなすだけ。今まで、そうして授業を受けてきた私に、そもそも進学願望などないのだ。

―いっそ就職してしまうか。


「なあ風介、まだ決まんねーの?」

悩む私にそう声をかけてきたのは、ひとつ前の机の上であぐらをかく、能天気な幼馴染みのもので。
なんだかんだとあっさり進路を決めてしまった晴矢を、私は思いきり睨みつけた。

「うるさい、」

顔をあげるときつい西日にさらされ、ぎゅうと目を細める。
晴矢は眩しくないのか、窓の外、グラウンドのサッカーコートを眺めていた。
晴矢はサッカー推薦で大学を決めていた。全国大会にまで出場したチームのキャプテンで、エースストライカー。声をかけてくる大学はいくらでもあったらしい。
その中に晴矢の行きたい大学もあったらしく、夏休みの間に実技の推薦入試をひかえていた。
座学は全くだめな晴矢にしてみればこれほど良い話はないだろう。

「風介はさ、頭良いんだからどこでも行けるんじゃね?」

「まあ、君と違って勉強してるからね、」

首を傾げるようにして言う晴矢に、そう返せば、ものすごく嫌そうな顔を向けられた。

「そう言うなよ…、」

期末試験を間近に控えているからか、晴矢は上体を折り曲げるように頭を抱えた。
どうせ、また私に泣き付くのだろうな、と小さく笑う。

「なあ風介、」

と、顔をあげた晴矢はいつもより真面目な顔をしていて、つられて私も笑みをひっこめた。

「…なに、」

「お前さ、やりたいことないんだろ、」

「…まあ、とくには、」

「じゃあさ、」

そこまで言うと晴矢は机から飛び降りて、私の真横に立った。

「晴矢?」

晴矢のほうへ顔を向けると、やはり晴矢はひどく真面目な顔をしていて。
そっと頬を両手で包まれて、晴矢の顔が近付く。
夕日にあたって、晴矢の黄金のような瞳はいつもより強く輝いているように見えて。

思わず、息をのんだ。

「じゃあさ、俺の嫁になれば?」

にっ、と。いつものように、私にいつも向ける笑顔を浮かべたあと、私が何か言うより早く、私の口は晴矢によって塞がれてしまった。

―それも悪くない、

そう、目を閉じた私の耳に、最終下校のチャイムがかすかに響いた。
















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南雲晴矢のプロポーズ。

10.07.01.






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