小話 | ナノ


11.04.15.

ななめうしろ
加椿





振り向いた先に、君がいなかった。


「キリ…?」

ここ数週間のことではあるが、いつもなら、振り向いた先に加藤の真剣な顔があった。
しかし、今はただ静かな廊下が広がるばかりである。
椿は戸惑ったようにあたりを見渡すが、やはり加藤の姿はない。

会長、どうかなさいましたか?

足を止めれば声がかかり、振り向けば顔をのぞきこまれていた。毎日だ。
それが当たり前となっていた椿にとって、加藤のいない風景というものはひどく居心地の悪いものへとなっていた。

「キリ…、」

「はい、なんでしょう、」

独り言のつもりで呟いたそれに、いつもの凜とした声が返ってきて、椿はびくりと肩をはねさせた。

「会長?」

どうかなさいましたか?聞き慣れた、いつもの加藤の声に、椿はようやく表情を緩めた。

「いや、なんでもない、」

どこへ行っていたのかは、聞かなくともわかる。きっと、困っている生徒を見つけたのだろう。
加藤は、人のために動ける人間だから。
行くぞ、と歩きだした椿の背中に、加藤の簡潔な返事が届く。

すっかりこれが日常と化していることを、椿は改めて認識したのだった。


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希里くんがいないと不安になっちゃう椿ちゃん^^
希里くんは椿ちゃんを最優先する気がしますが(笑)






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