小話 | ナノ


10.09.23.


南涼



 

急に目の前が明るくなった気がして、目が覚めた。
目をこすりながら身体を起こすと、カーテン越しに外が光っているのがわかって。

「雷…?」

ベッドから抜け出してカーテンを薄く開くと、外は土砂降りで、雷が鳴り続けていた。
ゴロゴロという身体に響く音と、雨が地面に叩きつけられるざあざあという音がうるさいほどに部屋に広がる。
明日には晴れるといいな、と溜息をついた。
ふと、枕元の携帯がチカチカ光っていて、何事かと開いた。
画面の眩しさに思わず目を細める。
メールの差出人は隣の部屋で寝ているはずの風介で。
内容は一言。

『まだ起きてる?』

部屋の電気を点けて、起きてる、とだけ返すと、すぐに部屋のドアがノックされた。
とんとん、と小さく叩かれたドアを開くと、そこに立っていたのはやっぱり風介で。
少し丈の長いTシャツに、ハーフパンツ。片手には携帯を握り締めて俯いていた。

「風介?」

声をかけるとぴくりと顔を上げて、俺の名前を小さく呼んだ。
泣きそう、とまではいかないが、眉を下げて怯えたような顔をした風介に首を傾げる。

「どうした?」

俺の質問には答えずまた俯いてしまった風介を、とにかく中に入れと促して、ドアを閉めた。
ベッドに並んで座って、そっと頭を撫でる。
もう一度、何かあったか、と聞くと、風介がようやく口を開いた。

「…眠れ、なくて…、」

相変わらず様子のおかしい風介に首を傾げる。
具合でも悪いのだろうか。
外ではさっきまでと変わらず雷が鳴り響いていて、部屋は明るいのになんとなく不気味だった。
そのとき。
耳が痛くなるほどの雷鳴が鳴り響いて、突然ぷつん、と部屋の電気が落ちた。

「わっ!」

「…っ!」

思わず口から変な声が出た。
隣の風介が息を呑んだ、と思ったら、同時に身体に強い衝撃がきて。
俺の身体にぎゅうと、細い腕が回された。

「風介…?」

未だ光ひとつない部屋の中で、風介が俺にしがみついている。
その身体は微かに震えていて。

「風介、お前…、」

雷が、と言いかけたところで、ぱっ、と部屋の電気が回復した。
俺に抱きついたままの風介の顔は見えない。
頭を撫でながら名を呼ぶと、風介がやっと顔を上げた。
蒼碧の瞳には、零れそうなほどに涙が溜まっていた。

「雷が怖かったのかよ、」

笑いながら頭を撫でると、風介は頬を朱くして俺を睨みつける。

「怖くない、」

「はいはい、」

ほら、と両腕を広げるが、風介は俺を睨んだまま動かない。
頑固だなーと思っていたらまたおおきな雷鳴が轟いて。
風介が俺の腕の中に飛び込んできた。

「はじめからこうすりゃいいのに、」

ぎゅう、と細い身体を抱き締める。
俺にしがみつくように回した腕がとにかく愛しくて。

「今度からはさ、もっと早く俺のとこ来いよ、」

こくんと小さく頷いた風介の瞳から、とうとう涙が零れた。



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昨日雷がひどくて眠れなくてですね
カーテンの向こうがぴっかぴっか光っててですね
停電した瞬間ひあああ!って叫んだんですね
私が^^

そんなわけで風介を怖がらせてみました^^




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