小話 | ナノ


10.09.10.

お題 09
バンガゼ



 
自室で本を読みながら、クララに貰ったチョコレートをひとつ、口に含んだ。
ずいぶんとくちどけの良いタイプだったそれは、口のなかですぐにかたちをなくした。口内に広がる甘さに、ほんの少しだけ頬が緩むのを感じた。
これは、なかなかうまい。
目では文章を追いかけたまま、また片手でチョコレートを口に運ぶ。
そうしていると、ふとバーンに声をかけられた。

「なあ、」

「なんだ、」

私のベッドに寝転がりテレビを見ていたバーンは、片手で頬杖をつき、私に視線を向けていた。
人の部屋だというのに態度がでかすぎないか、とは思うのだが、言えば揉めることなど確実なので黙っておく。

「お前って甘党だったっけ、」

それ、とバーンが指差したのはクララから貰ったチョコレートで。
やらんぞ、と言う私に、バーンはいらねえよ、と眉を顰めた。

「まあ、甘いものは嫌いじゃないよ、」

嫌いじゃないというよりはむしろ好きなのだけれど。それに、このチョコレートは特にうまい。
読んでいた本に栞を挟んでそっと机の上に置く。もうひとつチョコレートを口に含むと、そのままバーンの寝転がるベッドに、私も転がった。

「それに、」

バーンの顔にそっと私の顔を寄せる。
金色の瞳が大きく見開かれた。

「君だって、キスするとき甘い方がいいだろう?」

触れてすぐ離れるキスをすると、バーンは一瞬ぽかん、と間の抜けた顔をしたあと、耳まで鮮やかな朱に染めた。

「な…っ!」

その様があまりにおかしくて笑っていると、相変わらず顔の朱いままのバーンが私に覆い被さっていて。

「…バーン?」

「煽ったのはアンタだからな、」

まあ、それもいいか、と。
私はバーンの首に腕を回した。



―君だってキスするとき甘い方がいいでしょ?



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お題は 確かに恋だった様から

9月10日ということで、ほんのりリバっぽくしてみようとしたような、そうでもないような^^
バンガゼが好きです





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