小話 | ナノ


10.09.06.

プロポーズ 06
バンガゼ



 
※未来捏造


よく晴れた、日曜日のことだった。


久しぶりに出かけないか、というバーンと共に、特に目的地もなく車を走らせてはや1時間。
私は助手席からぼんやり窓の外を見ているだけだが、いいかげんバーンは疲れないのだろうか。変わろうにも私は免許を持っていないから変われないのだけれど。
どこに行くんだ、と聞いても、バーンは決めてない、と言うだけで、何を考えているのか全くわからない。
窓の外は、見慣れた町並みから海へと変わっていた。
人通りもほとんどない海辺を、ひたすらに走る。海水浴シーズンもとっくに過ぎてしまった今、こんなところに来る奴はほとんどいないだろう。
日頃はうるさいくらいに話しかけてくるバーンがあまりに喋らないと、なぜだかだんだんと不安が募ってくる。
バーンは、私たちは、どこへ向かっているのだろう。
行き先がわからないというのはこうも不安定な気持ちになるのか、と呆れてしまう。
ふと、私たちの関係のようだと思った。
もう想いを告げて長いというのに、それは誰に言ったわけでもなく、言えるはずもなく、どこへ向かうか全くわからないのだから。
いつ終わってしまうかもわからないのだ。バーンがいつ、やっぱり女がよかったというのか、わからない。そう言われたら、もう私はどうすることもできないのだから。
ぐるぐるとした思考の渦に陥ると、どんどん気持ちが落ち込むようで、少し気分が悪くなってきた。
外の空気を吸いたいと、バーンに声をかけようとしたら。信号も何もないのに、突然、車が止まった。

「ガゼル、」

バーンがハンドルを握ったまま、視線も前へ向けたまま、私を呼ぶ。
何、と返す私の声は、掠れていたかもしれない。
バーンはしばらく何も言わずに前を見つめていたが、シフトをパーキングにいれ、サイドブレーキまでかけると、ポケットから小さな箱を取り出して。それを私のほうへ差し出した。
やわらかい手触りの、小さな箱。
開けろよ、と促され、おそるおそる箱を開く。
真ん中にちょん、と存在する、シンプルな、それでいてひどく輝いて見える、シルバーリング。
私が何か言うより早く、バーンがまた車を走らせ始めた。

「そろそろ、お前は俺のだって社会的に証明したいんだけど、」

相変わらず前を向いたままのバーンの頬が、ほんのりと赤く染まっていた。
緩みそうになる涙腺に力を入れて、嬉しい、と告げれば、バーンはまた車を止めて。泣いてんじゃねーよ、と髪をぐしゃぐしゃに撫でられた。
泣いてない、と睨んだが、バーンはからかうように笑って、私にキスをした。
頬に涙が伝うのを感じて。私は目を閉じた。


―いくら想いに揺らぎはなくとも、証が欲しいんだ。


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プロポーズシリーズはこれでおしまいです^^
ラストはやっぱりバンガゼですよね…!
バンガゼと南涼は別ものなんです、私の中で…

バンガゼのわりにケンカップルぽくならなかった…



元ねた→「(デート中に)そろそろお前は俺のだって、社会的に証明したいんだけど」




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