小話 | ナノ


10.09.02.

プロポーズ 02
円風




※未来捏造


いつもの、鉄塔広場でのことだった。

円堂はいつも通り、巨大なタイヤを相手にひとりで特訓をしていた。
俺は少し離れたところに腰を下ろして、円堂の動きをぼんやりと見ていた。
中学の頃から変わらない、円堂の特訓。
あの頃と変わらない、真っ直ぐな瞳。

円堂は変わらない。

確かに背はぐん、と伸びた。中学の頃は俺の方が少し高かったのに、今ではきっと変わらない。
ひょっとしたら抜かされているかもしれない、とも思う。それが悔しいから、正確に比べたことはないのだけど。
それでもやっぱり円堂は変わらなく真っ直ぐで、サッカーに一途で。
幼い頃からずっと見てきた、円堂だ。

「あのさ、風丸、」

ああ、声もかなり低くなった。変声期の遅かった円堂も、今ではすっかり男の声だ。
円堂はいつのまにか特訓の手を休め、タイヤにそっと手をあてたまま、静かに言葉を紡いだ。

「風丸はさ、ずっと俺の側にいてくれたよな、」

小さい頃から、ずっと。そういう円堂は日頃の太陽みたいな明るい笑顔じゃなくて、妙に大人びた顔をしていた。
俺が円堂の側にいたということは、つまり円堂だって、ずっと俺の側にいてくれたんじゃないか。
俺がそう返すと、円堂はそうだな、と少し笑った。

「だからさ、風丸、」

円堂がタイヤから手を離し、ゆっくりと俺に近付いてくる。
…やっぱり、身長抜かされてるかもしれないな。
円堂は俺の目の前まで来ると、俺に手を差し延べて。
幼い頃から大きいと思っていた円堂の手が、ひどく大きく感じた。

「俺がさ、これからどう生きていくのか、これからの生き様も、ずっと側で見ていてほしいんだ、」

一度も追い付くことのできなかった円堂の大きな手に、俺の手をそっと重ねて。
こくん、とひとつ。頷いた。


―今までも、これからも、一番近くで。


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プロポーズシリーズ
本日はサイト初の円風でした^^

幼なじみって…いいですよね…



元ねた→「(夕暮れの白いビーチで)僕がどう生きていくのか、これからの生き様をずっと見ていてほしいんだ」





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