10.09.01.
▼プロポーズ
南涼
→
※一緒に住んでる
買い物の、帰り道のことだった。
日はもうすっかり傾き、先ほどまでオレンジ色に染まっていた町並みも、今や薄い夜色に包まれていた。
辺りは薄暗く、人通りも少ない。だから、と頼まれて断ることのできなかった私の右手は、晴矢の左手としっかり繋がれていた。
晴矢の右手にぶら下がる買い物袋から、がさがさと音が聞こえる。
「なあ風介、」
少しおさえたような晴矢の声に、くるりと顔をそちらに向けた。
「さっきすれ違ったじぃちゃんたち、わかるか?」
おそらく晴矢が言いたいのは、スーパーから出てすぐの道ですれ違った老夫婦のことだろう。
手を繋いで、ゆっくりと並んで歩くそのふたりの影が細くのびていて。しっかりと繋がった影がひどく羨ましかった。
覚えている、と頷けば、晴矢はそうか、と呟いたあと、なぜか黙りこんでしまった。
そういえば、今の私と晴矢は同じ状況にあるわけか。意識してしまうとなんだか恥ずかしくなってしまって、思わず、手に力を入れてしまった。
晴矢からもほんの少し強い力が返ってきて、つい頬が緩んでしまう。
「風介、」
晴矢の足が止まり、私も足を止めた。
日が完全に沈み、ほんのりと月明かりに照らされたいつもの帰り道で、静かに晴矢と向き合う。
晴矢の金色の瞳に、強い意思が浮かんだのがわかった。
「俺、お前となら、歳をとっても手を繋いで歩きたいって、思うんだ、」
だから俺と、そう続けた晴矢に、私も、と一言だけ返して。
そっと晴矢に身を寄せた。
私も、ずっと手を繋いで歩きたいと、思ったんだ。晴矢。
―もうこの手を、離さない、離せない
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またまた某ニュースぱろシリーズです
全部で6つ…!違うカプで書く予定です^^
南雲のプロポーズはすでに書いてたな、と後から思いましたorz
元ねた→「(公園で老夫婦を見ながら)お前となら歳をとっても手を繋いで歩きたい」