10.08.14.
▼お題08
ヒトガゼ
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バーン様のことはわりとなんでも知っていた。幼馴染だから。
何が好きだとか、何が嫌いだとか、何が得意で何が苦手とか。
自然と知っていたんだ。
だから今、バーン様が誰を想っているのかも、知っていたんだ。
「ガゼル様、」
「ヒート?」
偶然見かけたガゼル様を呼びとめる。
練習が終わったところなのか、首にはタオルがかけてあった。
お疲れ様です、と軽く頭を下げれば、ガゼル様は少し表情を緩めてくれて。
ぎゅう、と胸が痛くなった。
この痛みは、どこからくるのだろう。
「…ガゼル様、今夜―、」
照明を落とした暗い部屋で、ガゼル様の細い身体をそっと抱き締める。
ガゼル様の腕が俺の背中に回されて、俺は腕の力をさらに強めた。
「苦しいよヒート、」
くすくすと笑うガゼル様は、日頃の練習の時や、バーン様やグラン様と会話しているときとは全然違って、少し幼く見えて。
これがガゼル様の素なのか、とか。
これを見てるのは俺だけなのか、とか。
そう思うとどうしても胸がいっぱいになってしまって。
「愛してます、ガゼル様、」
知ってたんだ。バーン様がガゼル様を好きだってこと。
すぐにわかってしまったんだ。でも、その時にはもう遅くて。
バーン様を、晴矢を裏切ってしまったという事実はもう変えられないけど、それでも、それでも俺は。
「…愛してます、ガゼル様、」
敬語はいらない、と囁くガゼル様に、キスをした。
―それでも、愛していたかった。
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お題は確かに恋だった様から
ヒトガゼ←バン的な…
でもバーンに申し訳ないヒート的な…
わかりにくくてすみませ…!