Freeze | ナノ


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 海賊旗を持ったルフィを先頭に、麦わらの一味はトンジットという人物とシェリーというウ〜〜〜〜〜〜マ(馬)の元へ向かった。

「ブッ飛ばしてきた!」

 ルフィが海賊旗を差し出す。

「……、……ずいぶんケガしてる」
「……こんなのいつもだ」

 ニッと笑うルフィにトンジットは礼を言い、シェリーもルフィも嬉しそうに笑った。そしてチョッパーがシェリーをもう1度手当てしようとする。シェリーはフォクシーに撃たれていたのだ。

「成程ね。それで決闘を受けたの。もし何もなくても受けたでしょうけど」
「失敬だな! お前!」

 ルフィとナミが言い争う中、近くでは長い熊や鳥がのびのびと生きていた。

「(何アレ――!? 長っ! 木だけじゃなかった!)ウ、ウソップ! 何であんなに長いの!? 長すぎだろ!」
「なんでものびのび生きてるかららしいぞ」
「どんな理屈だよ!!」

 トンジットの話によると、この島は長いリング状の島で、普段は海によって10の島に区切られているが年に1度だけ潮が大きく引くので、島の者は3年に1度移住を繰り返しているのだと言う。しかし、竹世界一高い竹馬に挑戦したトンジットは竹馬が成長して降りられなくなって置いていかれたのだ。10年間竹馬の上で過ごしていたが、ルフィが竹馬を折り、無事(?)に突き落とされたのだった。
 1人と1頭を移動した村へ連れて行ってやりたいのだが、元々1つに繋がっているので記録(ログ)がとれないのだ。そこまでやってもらうことはないとトンジットは言い、麦わらの一味をもてなそうと誘う(ただしもてなすものは腐ったチーズしかない)。

 どすん!

「ぶ!!」

 トンジットが何かにぶつかった。

「うお! 何だこれは……」
「人!?」
「ぐごー……」
「でかっ!」
「ここにずっといたの!?」
「んん!?」

 アイマスクをして立ったまま寝ている男が目を覚ます。

「何だお前ら」
「おめェが何だ!!」
「木かと思った」

 どさっ……!

「ん?」
「ハァ…ハァ…! ………え!?」
「ロビン!?」
「どうしたロビンちゃん」
「!?」

 尻もちをつき、冷や汗を流すロビンをルフィとサンジは呼び、ゾロは刀に手をかける。

「……あららら、コリャいい女になったな……ニコ・ロビン」
「ロビン! どうしたんだ! 知ってんのか!? こいつの事!!」
「……! ……ハァ……ハァ……!」
「……昔……ちょっとなァ……」

 何も言えないロビンの代わりに男が口を開いた。

「……!」
「ロビンがあんなに取り乱すなんて……誰!?」
(敵……なのか?)

 戦闘態勢の麦わらの一味を男はなだめる。

「……あららら、まーまー、そう殺気立つなよ兄ちゃん達……。別に指令を受けてきたんじゃねえんだ。天気がいいもんでちょっと散歩がてら……」
「指令だと!? 何の組織だ!!」
「? ?」

 ハテナを浮かべるトンジット。ロビンはゾロの問いに答える。

「海兵よ。海軍本部大将$ツキジ」
「「「大将=I!?」」」
「た、……大将っておめェ……!! どんだけ偉い奴だよ」

 驚くサンジにロビンは返す。

「海軍の中でも大将≠フ肩書きを持つ将校はわずか3人…!! 赤犬∞青雉∞黄猿=Bその上には海軍トップセンゴク元帥が君臨するだけ。世界政府の最高戦力≠ニ呼ばれる3人の内の……一人がその男よ!!!」
「ひぃっ、な、何でそんな人がここにいるんだよ──!」
「そーだ!……もっと何億とかいう大海賊を相手にすりゃいいだろ!! ど……どっかいけー!」

 サンジの隣で叫ぶツナとゾロに隠れて叫ぶウソップ。

「あららら、こっちにも悩殺ねーちゃんスーパーボイン! 今夜ヒマ?」
「何やってんだノッポコラァ!!」
「話を聞けオラァ!!」
「自由人かよっ!」

 ナミに声をかける青雉にサンジとウソップとツナが叫んだ。

「ちょっと待ちなさい。お前らまったく……、そっちこそ話を聞いてたのか? おれァ散歩に来ただけだつってんじゃないの。カッカするな。だいたいお前らアレだよホラ……! ──忘れたもういいや」
「「「話の内容グダグダかお前っ!!」」」

 ズバッ!! と息ぴったりのツナ・ウソップ・サンジ。

「何なんだコイツ……!! おいロビン! 人違いじゃねェのか! こんな奴が海軍の大将≠ネわけがねェ!」
「オイオイ、そうやって人を見かけで判断するな。おれの海兵としてのモットーは『ダラけきった正義』だ」
「「見かけ通りだよ!!」」
「何でこの人大将になれたの──!?」
「───とにかくまァ……、あァちょっと失礼……立ってんの疲れた……」
「じゃさっきまで何で立って寝てたんだ」

 よっこらしょと膝を曲げて手にしていた上着と腕を枕にぐったりと寝転がる。そのまま青雉は話を続けた。曰く、ロビンの消息を確認しに来ただけで、捕まえるつもりはない。一味の総合賞金額(1億+6千万+7千900万)の計算もしない適当な青キジにゾロまでもが刀から手を離し、しろよ計算、とツッコミを入れた。

「ゴムゴムの<H〜〜!!」
「ん?」
「ちょっと待て待てルフィストップ!」

 ぶっ飛ばすといきり立つルフィをサンジとウソップの2人がかりで必死に止めた。

「なんだ散歩か! じゃこんなとこ通るなお前! 出ていけ!」
「めちゃくちゃじゃなっすか」
「なんとなくルフィが押してる……」

「──じゃあわかった……」
「分かったのかよ!」
「帰るが、その前に……さっき寝ながら聞いてたんだ」

 青雉はトンジットにすぐ移住の準備をするように言った。



「氷河時代(アイス・エイジ)=v

 ガキー……ン!!
 青雉は襲い来る海の主共々、海を凍らせた。自然(ロギア)系の悪魔の実ヒエヒエの実≠食べた氷結人間なのだ。
 村の皆に会えると喜ぶトンジットとシェリーを見送り、麦わらの一味は陸へ上がった。

「……」
「ん?」
「……、……」

 じっとルフィを見て、ポリポリと頭を掻く青雉。

「……何だ」
「……何というか……、じいさんそっくりだな……モンキー・D・ルフィ……」
「!?」
「奔放というか……、つかみ所がねェというか……!」
「……! ……じ……じいちゃん……!!」

 ビクッと目に見えて反応するルフィ。

「……じいさんって、ルフィの?」
「ん!? おいどうしたルフィ! 汗だくだぞっ!」

 べ、別に、などといいながらルフィはうろたえる。

「お前のじいさんにゃあ……おれも昔……世話になってね、おれがここへ来たのは……ニコ・ロビンと……お前を一目見るためだ。……あァ、そういえば6人と1匹だと聞いていたが1人多いな。……まァいいか」

 一瞬ツナに視線を向けるが、すぐに戻す。

「──やっぱお前ら……ここで死んどくか」
「!!?」
「なっ……!?」

 曲者揃いの顔ぶれや今までの所業と成長の速度。それは恐ろしいまでに。そして、何よりの理由はロビンだ。危険度≠熾\す懸賞金の額8歳という若さで賞金首になったこと。さらに次の「隠れ家」が麦わらの一味なのではないか、厄介な女を抱え込んだと後悔する日もそう遠くない、と言う。

「な、なんでそんな事が言えるんだよ!」
「それが証拠に……今日までニコ・ロビンの関わった組織は全て壊滅している」
「!!」
「!?」

 声を上げたツナに、青雉は淡々と返した。

「その女一人を除いて だ。何故かねえニコ・ロビン」
「……」

 ロビンは言葉を発さない。

「やめろお前! 昔は関係ねェ!!」
「成程……うまく一味に馴染んでるな」
「何が言いたいの!? 私を捕まえたいのならそうすればいい!! 三十輪咲き(トレインタフルール)=I!」
「!!」

 ついにロビンが声を荒げ、その腕が青雉の手を、足を拘束する。

「ロビ〜〜ン!! やめろォ!!」
「あららら……少し喋りすぎたかな。残念、申し越し利口な女だと買い被ってた……」
「クラッチ=I!」

 ウソップの制止も虚しく、青雉は胴で真っ二つになり、ガラガラと崩れていく。

「うわ──! 死んだ──!」
「いや……無理だ……! おいみんな逃げるぞ! 逃げよう!!」

 パキパキ……

「ひぃっ、ど、どうなって……」
「ん〜……」

 氷から青雉が再生する。

「んあァ〜〜……ひどい事するじゃないの……」
「ぎゃ──!! ぎゃ──〜〜!!」
「うわー! この人何ーっ!!?」

 青雉は生えている草を引きちぎって投げ、息を吹きかけた。

「アイスサーベル=B命取る気はなかったが……」

 ギィィ……ン!!
 ロビンに向かう刃をゾロが止めた。

「切肉(スライス)シュート=I!」

 サンジが氷のサーベルを蹴り飛ばす。

「ゴムゴムの<H……!!」

 ルフィが一撃入れようとしたところで、青雉がゾロの腕とサンジの足を掴んだ。

「銃弾(ブレット)<H!!!」

 そしてルフィの拳とサンジの左足とゾロの右腕が瞬く間に凍りついた。
「…………いい仲間に出会ったな………。──しかしお前は……お前だニコ・ロビン」
「違う……私はもう……!!」
「っ!!」

 青雉はロビンに抱きつくようにして全身を凍らせていく。仲間の声も空しく、否定の言葉を紡ぎながら全身が凍りついた。

「お前ェ〜〜っ!!!」
「わめくな……ちゃんと解凍すりゃまだ生きてる。ただし……体は割れやすくなってるんで気をつけろ。割れりゃ死ぬ。例えばこういう風に砕いちまうと……」

 青雉は拳を振り上げ、ロビンに向かって繰り出すが、間一髪ルフィがロビンを抱きかかえて下へかわし、事なきを得た。次に青雉は踏み砕く素振りを見せたためにウソップがロビンを救出し、一瞬の躊躇いのために死ぬ気化できなかったツナとナミのわずかな時間稼ぎのうちにチョッパーと共に治療のために船へと急ぐ。ツナは青雉の様子を窺う。

(追わない、)

 海軍大将というのがどれほどなのかツナにははっきりとは分からないが、目の前の男はその気ならばロビンの息の根を止められたはずだと思った。本当の目的が分からない。けれど、自分を受け入れてくれた優しい人たちだ、どうであろうと守りたい、それがツナの思いだ。
 時間稼ぎの際に凍らされてしまった左腕をそのままに死ぬ気丸に手を伸ばし、ゾロとサンジと共に戦闘体勢に入ろうとするがルフィから制止がかかった。

「一騎打ちでやりてェ! この勝負おれとお前で決着をつけよう」
「構わねェが…………連行する船がねェんで……殺していくぞ?」



 結局、ルフィを残して船へ戻ることとなった。
 凍った患部を海で溶かし(2人に続いてツナも覚悟して海へ飛び込んだ)、船へあがるとルフィを置き去りにしたことに関するウソップの非難やもしもの時に応えるだけの腹をくくれというゾロの叫びで不穏な空気となる。
 その後、ゾロ・サンジが青雉との対決の場へ向かい、ロビンと同じく全身氷漬けとなったルフィを発見して船へ運んだ。



 しばらくたち、チョッパー達の対処の末に2人の心臓は無事に動き始め、その日は全員が同じ部屋、ラウンジで夜を明かした。

「ホントに無事で良かったなぁ……」

 翌日、ルフィとロビンの体の安静のためにもうしばらく島に停泊することとなったので、手持ちぶさたなツナは甲板でぼんやりと空を眺めていた。
 麦わらの一味と出会ってまだ少ししか経っていないが、もうツナはほぼ完全に彼らを信じていた。信用していた。早く帰らなくてはとは思っている。ここに来た原因も理由も分からない現状で、誰一人知人がいるはずのないこの世界で出会えたのが仲間思いな彼らで良かったと思っている。例え今この瞬間帰れるとしても、躊躇うことが容易に想像できるくらいには。

(危ないのも痛いのも嫌だけど)

 海賊はツナの望む平和とは繋がらないものだ。それでも、もしかしたら彼らと一緒にいるならと思う日がくるのかもしれない。

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