欠けた青空のピース
シュウと白竜







さらさらと心地好い風が、悪戯に身体を吹き抜けていく
試合の後に何処かにいってしまったチームメイトを追い掛けた
分かってはいたんだ、いつかは離れなくてはならないと
それが余りにも突然だったから

彼がいつも居場所としている森
シュウという少年と出会った場所
ゴッドエデンの周りを囲うように生い茂る木々の合間を縫って、差し込む光が眩しい
日光が乱反射する森で、やっと見付けた黒髪の後ろ姿
シュウ、と一言呼びかけてみる
振り向いたシュウは小さく微笑む
どうしたの?とシュウが聞いたので、白竜もお前がどうしたんだ?と聞いてみた

「試合が終わった後、お前が急に居なくなるから焦ったぞ」
「心配してくれたんだ、嬉しい」
「馬鹿」

小鳥が、二人のやり取りを揶揄うように声を鳴らした
海から流れてきた鼻を突くような潮の香りがする
少し寂しげに目を伏せた白竜は、意を決してシュウに告げた

「俺は、この島を出ようと思う」
「……そう」
「だから、お前も一緒に…!」
「それは無理だよ」
「……!?」

一際強い風が木々を揺らす
いきなりすぎるシュウの切り返しに一瞬息をするのも忘れた

「…何を、言って」
「此処は僕の故郷だ、離れる訳にはいかないさ」
「…この島はもうじき封鎖されてしまう…そうなったらお前は…!」
「いいんだよ、白竜」

そう言ったシュウの表情は悲しげで、本当にさらけ出したい気持ちを押さえ込んでいるようにさえ見えた

「でもまぁ、出来ることなら、もう少し君とサッカーしていたかった」
「シュ、ウ」

ぐっと堪えた筈の涙が、僅かながらも頬を伝って零れ落ちていった
もう会えないと、もうシュウの声が聞けないのかと思うと、自分の感情でさえコントロール出来なくなるのだと知って、自分の弱さを見せられる
好きだったんだ、コイツの事

「だからこれは、君にあげられる最初で最後の贈り物」

シュウが音を立てずに白竜に寄り添った
優しく、強く、切なげに



「ごめんね白竜、ありがとう、だいすきだよ」



「シュ……っ」

手を伸ばしてみてもそこには何もなくて、あるのは空虚だけで
やっと掴んだ幸せが消えた気がした

きっと自分でも分かっていたんだ、シュウがこの時代の人間ではないこと
だから何かが欠けていた
だから気持ちに嘘をついた
どうせ消えてしまうんだろうって

だけどそれはとんだ勘違いで
消えてしまうから、大切なんだって

「……う、っふぁ…」

こんな事になるなら、ちゃんと向き合っておくべきだったなんて
どうしようもない後悔の中、叫んだ
もう戻って来ることのない想い人の名を、叫んだ


(空は、鬱陶しい程青く)
(君を失った心に沁みた)

Fin.
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