まどろみの中
『くろー…』
「ちょっと待って今いいトコ」


そう言って録画してあったバレーの試合中継を見る黒尾の目はとても真剣だ。それにいきいきとしている。こうなってしまったら中々私を構ってくれないのはもうわかっている。
「今日部活休みだけど、どうする?」
そう言って誘ってきたのは黒尾の方なのに、こんなのっておかしいと思う。…まぁ、二人きりっていうのが久しぶりだから本当は一緒に居られるだけで嬉しいんだけど、これは黙っておこう。
仕方がないから今日は我慢して見終わるのを待っていてあげようと黒尾のベッドにぼふん、と倒れ込んで目を瞑ると案外早く眠気がやってきてそのまま眠ってしまった。


ふわり、と体に何かが被せられたのを感じてゆっくりと目を開けると、いつの間に見終わったのか黒尾が私の横で寝転がっていた。あれ、私あれからどれくらい寝てたのかな。


『くろ』
「やっと起きたか」
『私どれくらい寝てた?』
「一時間弱かな」


そんなに寝てたんだ。ていうか「やっと」って。こっちからしたら「やっと見終わったのか」だよ。


『ふとん、ありがと』
「いいえー。てか、お前スカート短すぎ」
『みんなこれくらいだよ』
「そうか?」
『へんなとこ見ないでよ』
「無防備に寝てるお前が悪い」


ぐにぐにと頬をつねられて横に伸ばされる。やわらかいな、と言いながら私の頬で遊び始める黒尾に手を伸ばして黒尾の頬もつねってやると凄く不細工な顔になって笑える。


『ぶさいく』
「言っとくけどお前もだから」
『かわいいの間違いでしょ』
「んー?」


そう言って頬をつねっていた手がするりと私の頬を撫でると、黒尾との距離がぐっと縮まって一瞬だけ唇が触れる。別に初めてじゃないけど、黒尾は突然こういうことをするから本当に心臓に悪い。どうしても反射で顔が熱くなってしまう。少し離れて私の顔を見た黒尾が笑った。


「やっぱ、かわいいの間違いだわ」


ほら、すぐそう言うことを言う。しかも、私が恥ずかしがるのを知って面白がってやっているから本当に性格が悪いと思う。
これ以上真っ赤になっている顔を見られたくなくて、黒尾の背中に腕を伸ばして顔を黒尾の胸にぐりぐりと押し付けると黒尾が「くすぐったい」と声を漏らした。


『…鉄朗』
「お前ほんと呼び方定着しねーな」
『んー…』
「いい加減鉄朗で定着しないわけ?」
『いいの、今練習してるの』
「はやく慣れろよ」
『ね、やばい、寝そう』
「さっき起きたばっかだろ」
『元はといえば鉄朗が放置するから』
「あー、はいはい、ごめんな」
『悪いと思ってない、寝よ』
「今寝たら名前チャンのこと襲っちゃうかもー」


そう言って私の頭を撫でる黒尾に、胸に顔を埋めたまま「いいよ」と返事をすると、撫でる手が止まって少し動揺しているらしい彼に、小さく笑った。


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bkm
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