「うわ、山本またそれかよ…」

「え!?焼きそばパンうまいじゃないっスか!」

「いや、うまいけどさ…毎日それだと流石に飽きるだろ」



週に何度かはこうしてバレー部のみんなで集まってお昼ご飯を食べる。バレーの話をしたりするし、授業とかテストとかの話もしたりする。私も先輩達や後輩達と話すのが好きだから楽しみにしてはいるんだけど…今日は楽しめそうもない。



「…てか、名前静かだな」

「あ、そういえば。体調悪い?」



クロ先輩と夜久先輩が、研磨の隣でもくもくと弁当を食べ進めていた私に声をかけてくれる。いつもなら「そんなことないですよ!全然元気です!」って大声で答える所だけど、今日はそうもいかない。隣をチラリと見てみると、平然とした顔でパンを頬張っている。畜生め…。



『っ…、……』

「?」



必死に身振り手振りで体調が悪くないことを伝えようとしたけど、みんなの注目を浴びるだけで誰もわかってはくれないみたいだ。どうしようかと考えた所で、ポケットに何かの紙切れとペンが入っているのに気が付いてそれを取り出すと、研磨に「ルール違反」だと言われる。



「大丈夫ですか?俺保健室まで運びます?」



リエーフくんが気を使ったのか立ち上がってそう言うけど、ごめんそういうことじゃないんだ。…いつもの私がうるさすぎるから静かだとみんな心配するんだな。



『…ぁ、の』

「どうしたんだよ」



優しく聞いてくるクロ先輩に、とりあえず返事をしなくてはまずいと思いながら下を向いてなるべく小さい声で言う。



『だ、大丈夫です………にゃん』



そう言った直後に、静まり返る皆。
ちょっと待ってよ、なんで黙っちゃうかな。最後のやつはほんとに聞こえないくらい小さく言ったつもりなのに、聞こえたの?え?
カチャン、と誰かが箸を落とした音が聞こえる。もう駄目だ。恥ずかしすぎて顔が上げれない。くそ…。




「……は?」

「え…今…、」



少ししてザワつき始めるみんなに、もう恥ずかしさで顔が真っ赤になっているのが自分でもわかる。ああ、もう、どうでもいいや…。



『ああああ、もう!!だから言いたくなかったんですよ!!!…にゃん』

「!?」

「何?にゃん?」

「……名前今罰ゲーム中だから」

「罰ゲーム?」



研磨がみんなに説明をすると、みんなは納得して「なるほど」と言った。もういいや、さっさとお弁当食べちゃおう。



「だから今日静かだったのかー」

「苗字さんいつもうるさいですもんねー!」

「山本焼きそばがパンから落ちてる」

「ぅあ!?」

「ふーん、なるほどねぇ…」



リエーフくんちょっとどういうことかな?笑顔で君は何を言ってるのかな?
…クロ先輩絶対よからぬことを考えているな。もう、ほんと早く食べ終わって教室に避難しようかな。



『…私今日は必要以上に喋らないので、よろしくおねがいしますにゃん』

「なんだそれ。それじゃつまんねーだろ」

『っていうか!!私がにゃんにゃん言って誰が得するんですかにゃん!!!!』

「えー…、名前ちゃんが自分で考えた罰ゲームじゃないの…」

『っそうですけど!私の考えでは研磨がにゃんにゃん言うはずだったのににゃん…!』

「…ありえない」



だん!と屋上の床を叩きつけると、傍に居たリエーフくんが私の頭に手を置いて撫でながら「苗字さん可愛くていいと思います!」と言ってきたけど全然嬉しくないからねそれ。



「じゃあ、ここにいるやつでもう一人同じ罰ゲーム受けるとか」



面白そうじゃないか?
そう言って菩薩並みの笑顔を向けた海先輩は神様なのかもしれない。なんて名案なんだろう!私以外にも同じ苦しみを味わう人が出来ると…!



『さ!賛成にゃん!』

「え、何言ってんの海…」

「え!いいじゃないですかやりましょうよ夜久さん!」

「よっしゃ、夜久に言わせようぜ」

「おい黒尾ふざけんなよお前!」

「俺はもう名前とのやつで勝ったからパス」

「ずりィぞ研磨!!」

「え、え、ほんとにやるんですか!?」

『私優くんとかがやってくれると嬉しいにゃー』

「っえ!?」



やるやらないで、少しもめた後、結局みんなでじゃんけんして負けた人二人が私と同じ罰ゲームを受けることになった。誰が負けるかなぁ…クロ先輩とか一番猫っぽいけど、クロ先輩がにゃんとか言ってたらほんとにお腹がよじれるくらい笑える。夜久先輩だったら普通に可愛いと思うし、海先輩涼しい顔して言いそうだし、虎くんはめちゃくちゃ照れるだろうし、招平くんは喋らないだろうな。1年生は誰がやっても可愛いよ、早くじゃんけんしましょう。



「はい、じゃあ問答無用で強制参加ー。じゃーんけーん、」




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