『あづい…!』

「………」

『あーづーいー!!』

「名前うるさい、よけい暑くなる」

『やだもう暑過ぎる体育館ってなんでこんなに暑いの熱こもり過ぎ』



練習が始まる前の体育館で寝転がってバタバタと手足を動かしていると、私の顔の上に濡れたタオルが降ってきた。



『っぶ、』

「うるせーぞー」

『クロ先輩ですか?何ですかこのタオル気持ちいいですね』

「水で濡らしただけだけどな」



なるほど。私も自分のタオル濡らして首に巻いておこうかな。…それにしても今日は暑い。いつもはひんやりとしてる体育館の床もなんだか緩く感じる。



『…今日動きたくない』

「おいおい、仕事はちゃんとやれ」

『皆さん暑くないんですか…』

「暑いに決まってんダロ。見ろ研磨なんか練習始まる前から死んでる」

「…生きてるよ」



濡れたタオルをそのままに、寝転がったままでいると、頭上からまた声が聞こえた。



「うおっ!…名前ちゃん?何やってんの?」

『あ、夜久先輩ですか?きもちーですよコレ』

「タオル?」

『クロ先輩が濡らしてきてくれました』

「へえ」



寝転がったまま胸の前で両手を握ると、夜久先輩に優しく解かれた。



「それちょっと死んだみたいになるからやめような」

『あ、そうですね』

「オイ、いつまで寝てんだ。始めるぞ」

『えぇ、もうですか…』

「充分休ませただろ。さっさと動け」

『…あい』



ゆっくり起き上がって顔から落ちたタオルをキャッチすると、もらった時よりもすこしぬくい。凍らしたタオルとか欲しいなぁ。絶対気持ちいい。



『はい、クロ先輩。タオル』

「…いや、いらねーよ?もう一回濡らしてきてから返してくんない?」

『えぇー…わがまま…』

「普通だからな」



ほら行った行ったと、私を体育館から追い出すと部員のみんなに指示を出し始めた。




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