▼ It seems fun, above all
もうすぐ終わる。
そう連絡があったのが数分前。図書室で時間を潰していた私は荷物をまとめて校門まで歩く。自然と早歩きになってしまう自分に少し笑える。
校門に着いたけど、早く来すぎてしまったのか京治くんの姿はまだ見えない。そわそわとする気持ちを落ち着かせながら用事もないのに携帯を取り出して弄る。少しした所で後ろから声を掛けられて振り向くけど、声で京治くんじゃないことは分かった。
『?…えと、何か用ですか?』
「ね、一年だよね?」
『え、はい』
多分先輩であろう金髪の先輩と白髪っぽい人から一歩引いてから返事をすると、その先輩は「赤葦京治って知ってる?」と聞いてきたので、勿論知っていると答えようとすると横から待ち望んでいた声が聞こえてきた。
『あ、』
「ちょっと、何してんスか」
「何だよ、もう鍵返して来たのか〜」
「赤葦教えてくれないから聞いてみようかと思って」
ね?
ウインクまで飛ばしてきそうな金髪の先輩に苦笑いで返すと、先輩と私の間に赤葦くんが入って先輩に怒る。
「やめて下さい」
「怒んなよー」
「次はないですよほんと」
「わーかったって。ごめんね一年ちゃん」
『え?あ、いえ』
訳も分からず話が進んでいくうちに、多分この人たちがバレー部の先輩なんだと思う…なんとなく。京治くんとフレンドリーに話していることからすると今日一緒にご飯を食べたのはこの人達じゃないんだろうか。えっと…頭がアレな…。
「赤葦途中まで帰ろうぜ!俺がアイス奢ってやる!」
「まだアイスには早くないですか…じゃなくて、今日はすんません」
「何でだよ、何か用事あんの?」
「まぁ」
チラリと私のほうを見て言った京治くんに少しドキドキする。一々かっこいいんだよなぁ。
「…え、何、もしかして」
「じゃあ、俺帰ります」
「え、ちょ」
「行こう」
『あ、うん』
「赤葦!?」
先輩の声を無視して歩き始める京治くんに腕を引かれて私も歩き始める。後ろから聞こえてくる声に振り返ると金髪の先輩と目が合ったから会釈をして前を向いて京治くんの背中を見る。
学校から離れた道で、腕を離した京治くんが一言「ごめん」と言った。
『え?何が?』
「いや、さっき先輩に話しかけられて嫌じゃなかった?」
『大丈夫だよ、バレー部の先輩?』
「そう」
『じゃあ朝話してた人達だ』
「今日なまえの名前は出してないけど彼女いるって言ったら食いついてきたから」
『そうなんだー』
「ほんとごめん、明日も言っておく」
『ううん。楽しそうだね、部活』
そう言うと京治くんは笑って「楽しいよ」と言った。
実は京治くんがバレーをしているところをしっかりとは見たことがない。中学でもバレーはやっていたけど、恥ずかしくて近くから見ることは出来なかったし、練習での姿なら少し知っている程度で、彼がどれだけバレーが出来るのか知らないけど、彼は頑張り屋でもあるからきっと上手いんだろうな。…いつか試合見に行けたら行きたいな。優里ちゃんを誘って練習試合でもいいから見に行こうかな。
「さっき腕掴んでごめん」
『ううん、平気』
京治くんの左手に右手を取られて繋がる。久しぶりの感覚に顔が熱くなった。
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