About her

「はい?」

「いや、赤葦彼女居んのかなーって」



持っていた箸を動かす手を止めて、唐突に投げかけられる質問に何て答えようか悩む。…言ったら言ったで面倒臭そうだし、言わなかったら見つかったときにもっと面倒な事になりそうだな。



「…居ますけど」

「何ィ!?」

「はい、俺の勝ちー」

「は?なんですか?」

「赤葦に彼女居るか居ないかで賭けてたんだよ」

「…後輩使って何してるんですか」



呆れてため息を吐くと、どうやら賭けに負けたらしい木兎さんが俺にぐいぐいと近付いてくる。…ほんと面倒臭いな。



「誰だよ教えろよ〜」

「嫌です」

「木兎なんかには教えないよなぁ、俺には?」

「もちろん嫌ですけど」

「何でだよ!」

「木葉さん口説きそうなんで」

「……しないよ」

「なんですかその間は」



なんでなんでと駄々をこねる木兎さんと木葉さんを無視して、昼食の続きをする。…やっぱりなまえと食べるべきだった。ただでさえ最近は俺の部活のせいで一緒に居られる時間が少ないわけだし。彼女は大抵笑って「いいよ」と言ってくれるけど、自分の考えを結構隠してしまう方だから、本当はどう思っているのか分からない。



「同級生?」

「…そうですけど」

「同じクラス?」

「さあ、どうでしょう」

「何だよそれくらいいいだろー!」

「木兎さん早く食わないと時間なくなりますよ」



俺がそう言うと慌てたようにパンを頬張る木兎さんと「赤葦手強いなぁ」と言う木葉さんに少しだけ笑って残りの弁当も平らげると丁度鐘が鳴った。


  
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