For him, secret

入学式からもう一週間は経っただろうか。授業を全て終えた私は荷物を持って体育館へと足を進めている。もちろん目当てはバレー部だけれど、京治くんには内緒で来たから見つからないように外から眺めることにしよう。私達1年生はまだ正式に部活動には入っていないけど、京治くんや他の一部の人はもうすでに先輩に混ざって活動している人もいるらしい。私の隣の席の彼もサッカー部で活動していると聞いた。私は、部活何にしようかな。

目的地に近付くに連れて、ボールを打ち付ける音と、掛け声のようなものが聞こえてくる。そろそろと近付いて少しだけ空いていたドアの隙間から中を覗くとバレー部員の人達が練習しているのが見えた。…残念ながら京治くんがどこにいるのかまではわからない。そういえば、まだ私が片思いの時はよくこうやってこっそり練習を覗きに来ていたなぁ。懐かしい。姿は見えなくてもいいから、もう少しこの音を聞いていようかなと入口近くで腰を下ろそうとした所で目の前の扉が開く。



『!?』

「あれ、1年生?」

『っえ、あ、はい!』

「…もしかして部活見学!?」

『え!?』

「こんな所で立ってないで中に入ればいいのに!」

『い、え、あの違います…!すみません!』

「え、そうなの?」



カゴを手にしたポニーテールの先輩は残念そうにそう言って、なんだか申し訳ない。「じゃあ、どうしてこんな所に?」と聞いてきた先輩に咄嗟に「わ、私ボールを打ち付ける音と声が好きなんです!」と慌てて答えると、先輩は面白そうに笑って「なにそれ」と言った。恥ずかしくて目が合わせられない…もう少しマシなこと言えなかったんだろうか。



「それでもバレーに少しでも興味があるならまた来てね!マネ募集中!」

『あ、はい…!』

「まだ音聞いてく?」

『いえ、今日はもう帰ります』

「そ?じゃあ、また今度ね!」



ひらひらと手を振ってくれた先輩に私も手を振り返して体育館に背を向ける。…恥ずかしすぎてもう体育館行けない。…マネージャー、か。私の場合贔屓目が入っちゃうから、やめておいたほうがいいよね。

  
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